日々是遊歩。見て、聞いて、感じて、それを殴り書き。

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PBP2019参加記録 そしてこれが総括編

 今週末は、2度目のシルバーウィークの3連休ですが、どうやら台風の接近に伴い、秋雨前線が元気になってしまう様子……。

 この三連休に開催が予定されているブルベや、SR600への挑戦を予定していた皆様は、頭を抱えたくなる状況かもしれませんね……。

 かくいう私は、本業の方が結構忙しくなっておりまして……。
 10月はダブル、トリプルで外に出ないといけない日程があったり、数日間、出張が続くような日程にもなっています。

 いやあ……こんなに忙しくなるとか、夏の間には予測できなかったぞ(^^;)。
 結果、秋ブルベへの出走は、かなり難しくなりそうです。
 残念ですが、今年の私のブルベシーズンは、これで終わりかなあ……。

 では本題です。
 PBP2019の参加記録、終了直後の記憶が新しいうちに、と考えて、いきなり「総集編」をまとめていました。
 あれは直後の正直な気持ちを示すという意味では、意味のある内容になっていたと思いますが……。

 今、読み返すと、2015年の時と比べると、少々、内容が薄いですね(^^;)。
 ま、前回は途中でDNFしてパリに帰ってきており、特に何もする事がなく、2〜3日、色々考える時間もあったので、頭の中を整理しやすかったのでしょう。

 しかし、今回は滑り込みとはいえ最後までコースを走りきり、慌ただしく帰国の途について、帰りの飛行機の中でバラ打ちしたメモをベースにまとめた物だったため、どうも内容的には発散気味というか、まとまりのない物になっていた気もします。

 そして、走行編を全6回+延長戦1回の構成でまとめている間に、参加者間の事後の情報交換や、それぞれの参加体験レポートの公開などがあり、再度、いろいろな情報を目にする機会が増えた結果……。

 この事は、改めて書いておきたい。
 これは、もう一度検証する必要がありそうだ……。

 という内容の話が、次々出てきました。

 今回のPBP2019ですが、約400人もの日本人を送り込んだ事が、最も大きな成果だったかもしれません。
 これだけの数の参加者がいると、自発的に情報を発信する人の数も飛躍的に多くなり、結果、2011、2015よりも多くの情報、そして体験記録を国内に持ち帰れた上に、Webなどを通して目にする事が出来るようになりましたから。

 この情報量、ちゃんと全部に目を通そうとすると、かなり大変な事になりそうですよ(^^;)。

 そして、これが4年後に参加する皆様にとって、役に立つ情報となるのであれば、こうやって広いWeb世界の片隅でコソコソ情報を公開している私も、それなりに貢献できる機会があるかもしれませんしね……。

 とにかく、日本が国として参加者を送り込むようになって、これで5回目。
 参加者数もトップクラスとなり、そろそろ「新参者」から「常連」に立場がシフト……していく気もしますが、さて、どうなることか。

 こんな背景を受けて……というほどではないですが、PBP2019に関連して、開催後の一ヶ月(もうそんなに経つのか……)の間に、いろいろな人と情報交換し、反省会(という名目の飲み会 ^^;)で大騒ぎし、様々なことを考えて、自分なりに色々とまとめた総括編をお送りします。

 正直、自分でも色々、詰め込みすぎたな、というくらいの分量になりましたが(^^;)、興味のある皆様は、以下のRead moreをクリックしてください。

1.通信環境について
 4年前のPBP2015の時には、モバイルWi-fiを持参していました。
 当時は携帯電話(ガラケー)が主流から退場し、スマートフォンが一般的になっていた時期でしたが、まだSIMフリー端末はそれほど多くなく、日本の大手キャリアもSIMロック解除に消極的だった背景があり、モバイルWi-fi経由で現地回線に繋ぐ形で対応していた人が多かったと思います。

 しかし、今思えば、電源管理が必要な機材が一つ増えるという、妙な面倒を抱え込む結果にもなっていた気がします。
 というか、単純に持ち歩く荷物が増えていたわけですしね……。

 その後の4年間でモバイル通信関連の環境も大きく変わり、現在はSIMフリー端末も多くなりましたし、大手キャリア製品でも一定の条件を満たせば、SIMロック解除ができるようになりました。
 私も、2015年はモバイルWi-Fi持参でしたが、今回はNTT Docomo用の端末(機種変後の遊休品)をSIMロック解除して、現地に持ち込んだ経緯があります。

 で、SIMフリー、SIMロック解除後の端末で使用する、現地通信用のSIMは、欧州圏最大手(らしい)Orange社のSIMを、日本で買ってから持参しました。


190818g9.jpg
こちらがパッケージ。
Orange Holidaysという、
一定容量までは無料で使用可能なパック。

このパックは本来、3GBまでだが、
8/22日までにアクティベートしたら、
8GBまで使用可になっていたこともあり、
お得感を感じて購入してしまった。


 なお、なぜ日本で買っていったかというと、日本語マニュアルが付属しているから、ですね(^^;)。
 一応、シャルル・ド・ゴール空港などでも同じSIMを買えるらしいですが、マニュアルが日本語に対応しているかは不明です。

 ちなみに、アクティベーション(SIM有効化)は、フランスに到着後、このSIMを差し込んだ端末から特定の番号にダイヤル発信し、SMSを受け取るだけで可能でした。

 ……と言いたいところですが、ウチの機体は少し旧式だったためか、APNの設定をしないと、通話のみしかできませんでした。
 そうなる可能性については、私より先にフランス入りしていた方より流れてきた情報で見ていたため、フリーSIM用のAPN設定は空港のWi-Fiに繋いで調べ、以下を設定。

 Access Point Name(APN): orange
 User name: orange
 Password: orange

 設定自体はサクサク進み、空港のWi-fiはそこそこ高速な回線だったこともあり、荷物やバイクケースが出てくるまでの待ち時間で終わらせることができて助かりました。

 なお、新しい世代のAndroid端末やiPhoneの場合、SIMカードを挿しただけでOKだった、という話も聞きますので、参考まで記録を残しておきます。
 また、SIMカードを入れ替える段階になって、SIMトレーを引き出すためのピンを持参しなかったことに気付いて、周囲に声をかけまくっている人もいらっしゃいましたので……。

 次回、同様の手段で通信環境を整えようと考えている皆様は、出発前に一度、自分の端末のSIMカードの交換手順等を確かめておいた方が良いでしょう。

 ちなみに、フランスでの電波状況ですが、音声通話は……実際には使わなかったですが、比較的場所を選ばず通じたと思われます(知り合いからの電話は、ちゃんと着信していました。なお、当然ながら、電話番号はフランスの番号になってますが)。
 データ通信の方は、都市部では4G回線の整備も進んでいるらしく、イル・ド・フランスに属する地域(パリ近郊や、サン・カンタン・アン・イブリーヌなど)では普通に4G回線の電波を掴んでいました。

 しかし、同じイブリーヌ県でも、ランブイエに行くと、電波表示はHを示す時が多くなり、画像を含んだSNS投稿やメールがタイムアウトで送れない事も多くなりました。

 さらに西へと進むと、PCが置かれた町でも電波表示がEになる場所(タンテニアック、ルデアックなど)も見られるようになり、町と町の間の農地では圏外、という事も多くありました。
 いや、そういう場所ほど、携帯電話が必要なんじゃない?とも思うのですが……どうなんですかねぇ……。

 まあ、PCの周辺は、参加者やスタッフ、ボランティアに地元の皆様など、数百人が一ヶ所に固まっていた、という状況もあったので、普段とは違う条件だったという話もあるかと思います。
 ですが、全体的に見て、日本の大手3大キャリアほど、どこでも4Gが使えるわけではなかったのが、2019年段階の状況です。

 ちなみに、ブレスト市内は4Gの電波を掴んでいました。
 さすが、大都市です(^^;)。

 なお、ホテルではWi-Fiに繋ぎ、電波がHやEの時は、SNSにも文字投稿しかしなかった結果、滞在期間中のデータ通信量は約1GB程度。
 フリーで8GBまで使える設定でしたが、それが過剰に見えるくらいに余裕でしたね(^^;)。
 この辺りは、個々の使用状況によって変わってくる部分ですが、一週間程度の滞在なら、8GBあれば十分だと思われます(余程重い動画などを見ない限り)。

 また……まあ、通信に関するエピソードとしては……レアケースだと思いますが、現地でSIMカードが不調だ、という人が周囲に色々聞いている中で、脳が瞬時にシャットダウンされてしまったような質問もありました。

 「SIMロック解除って、どうやって設定するの?」

 ……その場が微妙な沈黙に覆われたのは、皆様、ご想像の通りです……。

 なお、モバイル通信環境は、2011年→2015年→2019年と進む間に、かなり大幅に変わってきていますので、次の4年間でも大きく環境が変化する可能性があります。
 2023年にこの文面を見ている皆様は、最新情報をご確認ください(多分、5G回線になっているだろうしね……)。

2.言葉の壁(正直、そんなに高くない)
 海外に行く場合、多くの日本人が心配するのが、言葉の壁の問題だと思います。
 ですが、正直、PBPに関しては、その壁はそんなに高くない、と私は思います。

 事前にフランス語などを勉強している皆様もいらっしゃいましたが、私は今回、特にフランス語は勉強せずに行きました。
 実際、ボンジュール、ボンソワール、メルシー、セ・ボン程度がちゃんと使えれば、そんなに困りません。
 2015年の渡仏時には、そこそこフランス語を勉強してから行きましたが、結果的に「ボンジュール」などの挨拶以外は、「ジュスイ、ジャポネ」程度しか使わなかったので、今回は別にいいや、となりました。

 それより重要なのは、「英語」です。
 圧倒的に、こちらの方が重要です。

 なぜなら、最も長時間、接する事になるであろう「参加者間」で使われる言語は、だいたい英語だからです。
 コース上では、フランス人も英語で話しかけてくる事がほとんどです(というか、話しかけてくる相手は、グループ内で英語を話せる人、だったりする場合が多い)。
 PCでは、だいたい、英語がわかるスタッフが常駐していて、その人の所まで案内してもらえたりします。

 で、やはりお互いに母国語ではないため、カタコト同士の会話になったり、微妙に言い回しがおかしかったりしますが、それも身振り手振りと前後のつながりで、何とかなってしまうものでした。
 だから、変に付け焼き刃でフランス語を覚えるより、それなりに知識のある英語をちゃんと復習していったほうが、周囲とコミュニケーションが取れるようになるでしょう。

 ちなみに、英語に慣れるためには、仕事でマレーシアに一ヶ月、滞在した時にやったように、とにかく「英語を日々、耳で聞く」事を徹底しました。
 (マレーシア滞在中は、ホテルではディスカバリーやナショジオなどの英語番組チャンネルをずっと流していた)

 実際にやったのは、手元にあった英語の映画、「ロード・オブ・ザ・リング」三部作のDVDを延々、字幕なしで見続ける、という事で……。
 何度も見ている映画だけに、だいたい、どのシーンではどんな会話をしているか、頭に入っているので、「あ、こういう言い回しでも、話として通じちゃうのね」というのが結構、頭に入ってきましたね……。

 ま、見る映画を間違うと、超ド級のスラングが頭に叩き込まれる危険性もあるわけですが(^^;)、ある程度、社会的なステータスが高い人が出てくる映画を選べば、だいたい外さないかと思います(大企業の役員とか、弁護士とかね)。
 あるいは、子供向けのコメディ作品などは、意外に丁寧な言葉で作られているようですし、何より、子供でも分かるように、簡単な単語を選んで作られているので、「慣れる」ための第一歩には最適かもしれません。

 逆に、アクション、ギャング系の映画は、避けたほうがいいかも……ですね(^^;)。
 おいちょっと待て、というような、かなり凄いスラングが飛び交う作品も多いですし……。

 とはいえ、今となっては「ロード~」の台詞回しって、日本で言う「時代劇」的なものだったりしないか、ちょっと心配になっていたり……(王や騎士、エルフ族とか、物語が中世程度の時代観のような気もするし……)。
 「拙者、日本人でござる」とか、「いやはや、かたじけない」みたいな事、言ってないだろうな……(^^;)。

3.食事について
 2015年までのPBPの参加レポートには、PCで提供される食事について、「あまり美味くない」などという言葉が結構見られますが……。

 2019年に関しては、食事はかなり良くなっていた気がします。

 というか、こちらが対処に慣れたのでしょうか?
 悪い評判は、ほとんど聞かなくなった気がします。

 特に今回、2019年のPBPでは、「マイソルト」を持参し、薄味だった場合、料理にふりかけて食べていた、という皆様も多かったようで、そういう皆様からは、「食事が以前より良くなっていた」という話を多く聞きました。

 ちなみに、味付けに関しては、PCでも街角のバーでも、日本人感覚ではデフォルトでかなりの薄味です。
 この辺りは、「日本人の日常での塩分摂取量が、そもそも世界的に見ても多い」という背景もありそうです(それゆえ高血圧が多いとかなんとか、厚生労働省の資料で色々見られる ^^;)。

 ただし、走行編のレポート中にも書きましたが、コース終盤の復路モルターニュ・オ・ペルシュの食堂で、近くに座った西洋人が私の持参したペッパーソルトをマカロニ系パスタに使ったところ、ガツガツと物凄い勢いで食べ始めた、なんて事もありました。
 もしかすると、薄味で物足りない、と感じているのは日本人だけではないのかもしれません。

 ま、普通に考えたら、ハードな超長距離走行の発汗で体がミネラル不足になっているのは確実なので、それを補うために多めに塩分をとった方が良いのかもしれませんね。

 ちなみに、私が持参したペッパーソルトは以下の製品です。

ハウス食品 香りソルト<4種のペパーミックス>
https://housefoods.jp/products/catalog/cd_1,083990.html

 この製品、出発前に、素茹でのマカロニやパスタに直接、ふりかけただけでも、そこそこ美味しく食べられたのが、現地持参用として採用した理由です。
 こういった「ミックスソルト」系の製品は他にも沢山ありますので、皆様、色々試してみると面白いと思います。

 なお、今回「マイソルト」を持ち歩いてみて、これはかなり良い対応だったと思いました。
 これから参加を考える皆様も、お気に入りの「塩」や、いつも使っている「塩」を持参し、いつもの味に近づけたり、足りない塩分を補うようにすると良いかもしれません。

4.PBPのコースについて
 走行編の本文中でも触れましたが、PBPのコースが引かれているフランス北西部の地形は、根本的に日本の地形とは異なっています。
 また、道路整備の考え方や基本方針も、恐らく日本とは異なっていると思われます。
 (各都市を繋ぐ道路線形などを見ると、ホントに日本とは大きく違うのがわかる)

 以下、順を追って説明しましょう。

(1)フランス北西部の地形について
 フランス北西部の地形について考える前に、日本の一般的な地形を想像してみてください。

 山があり、谷に沿って川が流れ、盆地があって、下流側には平野が広がる……というのが、日本における一般的な地形になると思います。
 そこそこ発達した山岳地と、河川が押し流した土砂などが堆積し、谷底に発達した平地(盆地)と、海に向かって押し出された堆積物が作る平野に広がる湿原(現在は水田として活用)や草地(現在は畑や住宅地として活用)というのが、日本の地形です。

 では、フランス北西部の地形は……というと……。

 小高い丘が幾重にも連なる丘陵地です。
 Googlemap上で、同じ縮尺で、日本とフランス北西部の地形レイヤーを表示すると、その差ははっきりしています。


190818h0.jpg
日本の本州。
関東地方を中心としたエリアだが、
全国大体同じ地形。
例外は北海道の道東くらい。

190818h1.jpg
フランス北西部。
山岳地の緑色がほとんどない。
(地形的に、それより低い凹凸しかない)


 なんだ、こんなに標高差が無いなら、平坦基調、と言っていいんじゃない?
 多分、多くの人はそう考えると思いますが、それが最初の罠です……(順を追って説明していきましょう)。

(2)道路網の整備状況
 これも日本とフランス北西部は、ずいぶん異なります。

 日本の道路は、上に掲載した地形の画像でもお判りいただける通り、山と平坦地が比較的、はっきりと分かれています。
 こういう国土なので、交通網を設置する場合、河川沿いの比較的勾配が緩やかな場所に道路や鉄道が集中し、基本的に「谷」に沿ったラインが、平野や盆地を繋ぐネットワークになっていきます。
 山岳地を越えた先の都市に向かう場合、可能な限り勾配が緩やかにとれるラインを縫って、場合によっては九十九折で道路が敷かれ、稜線の一番低い場所(鞍部)を越える「峠道」が設定される場合がほとんどです。

 近年は土木技術が発達した結果、「谷は長い橋梁で飛び、山は長大トンネルで抜く」という方法で、可能な限り一定勾配の道路が設置されることが多くなっていますが、「地形の弱点を縫って道路を整備する」という基本的な考え方は同じです。

 一方で、フランスの道は……上の画像では、大都市であるレンヌ周辺を見ていただければわかる通り、主要都市から出る道路は、周辺都市へと放射状に設置されます。
 もっと表示縮尺を大きくしていくと、国道や地方の主要道の表示が網目のように国中を、文字通りに「網羅」しているのがわかります。

 日本の道路のように、険しい地形を回避しているのはアルプスやピレネーなどの山岳地周辺だけで、それが無い北西部は、ほぼ、まともに丘陵地を突っ切る形で道路が整備されている、と考えて良いでしょう。

 日本とフランスでは、地形と道路整備の考え方が、これだけ違います。
 ですから、コースを走る際に受ける印象も、かなり大きく異なります。

(3)PBPのコースの特徴
 Web上に参加記録が増えてくる2011年以降、何度も語られていますし、私の2015年のレポートでも何度も書きましたが、何度でも繰り返し、書きましょう。

 フランス北西部を東西に進むPBPのコースは、まともに丘陵地を横断する形で設置されています。
 つまり、「比喩表現などでなく、延々とアップダウンを繰り返すルート」になります。

 平坦地って、町の中のほんの一部くらい?
 というか、町がそもそも丘陵の上に作られているので、町に到達する前には、必ず坂を登ります。
 PCが置かれた都市で言えば、城塞都市のフジェールは特に厳しいアップダウンが待っています(そりゃ、城塞が作られるのは、「守りに硬く、攻めるに難い」場所なんだから当然だ)。

 上の画像で、山らしい地形はない、という事はお判りいただけたと思いますが、それでも積算の獲得標高が10,000mを超えるというのは、普通に考えたらちょっとおかしい事は理解できると思います。
 では、なぜそんな数字になるかというと、答えは簡単で、細かい登り下りが休みなく繰り返されている、というのがこのコースの特徴です。

 というか、逆説的にいうと、日本でも平坦地として表示されている関東平野ですが、東京の都心部だけでもあちこちに激坂が存在し、決して単純な平坦基調ではない事は、首都圏在住の皆様ならよくご存知でしょう。
 (地下鉄銀座線が、渋谷では高架鉄道になる、とか、高低差がおかしいエピソードは色々ありますよね)

 そして、2019年にコース全体を走り切ってみて、私が一つ、確信したことがあります。

 「日本の1,000km、1,200kmのブルベを、制限時間ギリギリまで使って完走できる程度の力では、PBPの時間内完走は危うい」

 地形と道路整備の基本方針が違うため、日本のブルベでの常識はほぼ通用しません。
 日本の1,000kmのブルベ、同じ2019年に開催されたもので見ると、私はAR日本橋開催の奥の細道1000を走っていますが、率直な感想で、「PBP2019のコースは、奥の細道1000の倍以上、厳しかった」というのが実感です。

 日本の地形では、山岳地と平坦地がはっきりしているため、「力を出して進まないと駄目な区間(峠の登り等)」と、「力を抜いていても、ブルベペース以下に落とさなければよい区間」が明確です。
 おそらく、国内開催のブルベに慣れてくると、「ここは頑張って走ろう。でも、この峠を越えたら、ゆるポタ走行でも楽勝」という感じの意識でコースを見るようになり、実際、ゆるポタ混じりでもギリギリで完走できてしまいます。

 一方の、PBPのコースは。
 最初から最後までアップダウンが続くため、いつまでもインターバルトレーニングをやっているような走りが求められます。
 登ったら、下りで休めばいい、と思うかもしれませんが、下りで休みたくても一瞬で終わる上に、下りの勾配が緩く、足を回さないと下りなのに完走ペースより速度が落ちている、なんて事も普通です。

 つまり、日本のコースと違って、全く休みどころがありません。
 日本のギリギリ隊走りに慣れていると、恐らくは往路の早い段階で足が終わって回らなくなりはじめ、一昼夜走り続けて到達するルデアックくらいで限界に到達し、物凄く辛い展開になるでしょう。

 毎回、往路のタンテニアック~ルデアック間で、体調急変を訴える人が多くなっているのは、恐らく、こうした背景があるのではないかと個人的に考えています。

 そして、苦しくなってきた結果、せめて中間地点のブレストまで行こう……と、目標を下方修正することになりますが、一部の皆様はそれすら達成できずに往路途中で「アバンダン」を選択することになると思われます。


19081893.jpg
ブレスト手前、
プルガステル橋から見た風景。
一種、象徴的な風景で、
ここまで来たんだなあ、と、
もう終わったような気分もなる場所。
(実際はまだ半分未満の場所だ)


 そして、その「アバンダン」に至るパターンに見事にはまったのが、2015年時の自分だった、と、今になってそれを強く感じています。

 そもそも論として、PBPはもともと、「レース」として始まったものです。
 レースとして、トップを競い合うためのコースであったからには、「それなりの高出力で走り続けないとゴールに辿り着けない」のは、少し考え方を変えてみればお判りいただけると思います。

 日本のブルベからイメージされるような、休日の気ままなサイクリングの延長で考えていると、恐らく、時間内完走は難しいと思われます。

5.2023年、PBPで完走を目指す皆様へ
(1)有効なトレーニングの私案
 フランス北西部の地形及び道路整備状況に対応した走り方を身につけること。
 これが何より大事だと思います。

 抽象的過ぎて良くわからないと思いますので、もう少しかみ砕くと……。

 バーチャルライド環境がある皆様は、インターバル&SST系のトレーニングメニューを、30分~1時間で良いので、できるだけ毎日こなす事により、それなりの時間、高負荷で走る感覚を体に叩き込むこと。
 実走では、高めの負荷で一定時間、同じペースを守る等の走り方で、同様の感覚を体に叩き込むような感じが良いのではないかと思います。

 ちなみに、「登坂耐性を高めるため、激坂峠を登る」というのは、対処として悪くはないですが、完全ではないかな、と思います。
 激坂峠の一発登りよりも、短い登りが小刻みに繰り返し出てくる場所を、できるだけノンストップかつ一定ペースで走り抜けること……の方が、適切ではないかと思います。
 パワーメーターを使っている皆様にわかるように言えば、FTPの90~95%の上げ下げを小刻みに行う感じ、と言えばよいでしょうか?

 ……ですが、これは私が個人的に感じる所であるとともに、私は専門的なトレーニングなどの指導を受けたことがないので、本当に「感覚論」でしかありません。
 できれば、他の参加者の皆様が感じた「PBPを完走するための走り方」も参考にして頂いた方が良いでしょう。

 なお、日本のブルベを走る場合は、制限時間いっぱいまで使った走行ではなく、準レース的な走りを意識して走ると良いかと思います。
 または、キャノンボールなどのファストラン型のロングライドに挑戦するのも良いかもしれませんね。

 もっとも、当然ながら交通ルールは守ったうえで、の話ですが。

(2)集団走行スキルを上げる
 PBP2019走行中に、とある私設エイドで、「日本人は沢山参加しているのに、みんなソロライドだね。何で?」と、物凄く奇妙な事のようなニュアンスで聞かれました。
 確かに、欧州圏の参加者は、同じ国やクラブのジャージを着用した十人くらいの集団を作ったり、足の合うもの同士が即席で集団を作って走っていることが多く、単独走はギリギリ隊か、逆に滅茶苦茶に速い人しか見かけなかった気がします。

 そして、そこに完走の秘訣があるのかな、という事も、2019年の体験で感じました。

 日本ではなかなか練習できない事ではありますが、PBPでは、足のあった参加者同士で、自然発生的に出来上がる集団で走ると、驚くほど効率よく進むことができます。

 互いが風よけになる効果とともに、周囲に速度を合わせて協調する意識を強く働かせることで緊張感を生み、睡魔の侵入等を防ぐ効果も一定以上、あるように感じられます。
 単独走において「自分の疲労度」を把握するのは案外難しく、気付いたらサイコンの速度が完走ペースを下回っていた、という事が、特に復路ではたびたびありました。
 こういう時も、パックで走行していたら、周囲と速度を合わせて走ることを優先し、ペースダウンしなかったかもしれません。

 なお、欧州圏の皆様は、自分の周囲にいる参加者の力量を見極めて、力が合うもの同士で積極的にパックを作り、その中で少し力量的に劣る人(高齢であったり、女性であったり、アジア人のようにそもそも体力的に不利な人など)を積極的にフォローするような走りを展開していたように思います。
 これは、普段のブルベでは単独走が基本で、ご夫婦で走っている女性参加者に対しても、「引いてもらってるだけ」なんて嫌味を言う人までいる日本人とは、全く発想が違っていますね……。
 (個人的に、前を引いてもらうだけで200~600kmも走れてしまう女性の方って、物凄く強いと思いますけれど)

 とにかく、欧州圏の皆様の思考は、横から見ていた限りではありますが、「自己完結=単独で成し遂げる」という感じではなく、「個々に自身で責任を取れる者同士、リスペクトし合って互いに力を合わせる」という感じで、「参加者同士の互助の精神を尊重し合う」スタイルを、本当にスマートに体現していたように思います。

 なお、残念ながら現状、日本人のPBP参加者の中で、積極的に欧州圏の皆様と協調して集団を組んで走れるようなスキルを持っている人は、それほど多くないように思います(とりあえず、私は全然ダメだ ^^;)。
 というか、レース志向の皆様を除けば、日本で「集団走行」のテクニック等について、きちんと指導を受けた経験がある人の方が少ないのではないでしょうか?

 毎年開催されているフレッシュでも、「他者と歩調を合わせる難しさ」が繰り返し語られていますし、ブルベは「自己完結」が求められるという事が強調され過ぎて、単独走行が基本、という風潮が強すぎる気がします。

 今回、PBPを最後まで走った結果、日本のブルベ界に何となく広がっている「自己完結=単独で完走すること」という認識って、実は世界的に見たら、ちょっと違う方向を向いているのではないか、という気もしてきました。
 こう考えると、日本人のブルベに対する感覚も、もう少し変わらないと駄目なのかもしれません。

 ……とはいえ、個人の考えとして、今の日本的意識を貫くのは問題ないとも思います(結局、楽しみ方は自由ですから)。
 また、今の日本の交通ルール、社会全体が自転車趣味に対して向けている目を考えると、いきなり「集団走行の練習しようぜ!」というのは無理があるのは、さすがに私でもわかります……。

 フレッシュだけでなく、どこか別の機会でもっと頻繁に、「集団の力量を正しく察して、それに足を合わせて長距離を走りぬく練習」ができる機会があればなあ、と思うのですがね……。

 そして、私のような、「基本単独走行でギリギリ隊上等!」な走りが板につき過ぎたオッサンが変化できるか、色々微妙な気もします(変われるように努力はしますよ、そりゃもちろん ^^;)。

 なお、今回のコース上で感じましたが、パックで走る場合、やはり欧州圏の皆様が主体の集団は、物凄く走りやすかったです。
 ですが、(日本人を含む)アジア人主体の集団は……なんというか、やはり全体的に欧州圏の参加者と比べると、脚力も体力も一段落ちる、という感じだった気がします・……。
 (というか、モルターニュ・オ・ペルシュ〜ドゥルー〜ランブイエの区間では、私がなぜか、タイ、マレーシアから参加の数人グループを引いてましたからね。なんで日本人でも「中の下」程度の私が先頭を引いてるんだと ^^;)

 なので、できれば欧州圏の皆様の仲間に入れてもらえるよう、日本人は集団走行スキルや、欧州圏の皆様のスピードとパワーに追随できる脚力を鍛えないと駄目、という事になるかもしれません。

 それか、本気で完走を目指す人たちで、「純粋に日本人による時間内完走目標ペースのパックを形成する」ことを真剣に考えないと駄目かもしれませんね。

 ここまで来ると、何だか話の内容が、少し以前の自転車小説や自転車漫画のネタになっていた、「日本人を三大ツールに送り込むため、日本人のロードレースチームを世界レベルに強化して欧州に殴り込む」系の話になってきた気もしますが……。
 同じようなことは、実は、2011年のPBP直後くらいから言われていることだったりもするようです(^^;)。

 ただし、今回のPBP2019で、日本人の参加者は約400人にもなり、下手な欧州国以上になってしまったこと。
 そして、今まで複数回挑戦し、完走を勝ち取れていない人もいる事を考えると、そろそろ参加者全体のレベルの底上げを考えるべき時期に来ているのかもしれません。

(3)もう一つの課題:レスト&リカバリー
 当然と言えば当然なのですが、このコース、終盤に近付くほどに疲労の蓄積が酷くなり、徐々に自分のペースで走る事も難しくなってきます。
 私はコースの最後の方になると、必死で全力を出しても、スタート直後に楽々出せていた速度での巡行がやっと、という状態まで追い込まれていましたしね……。

 私の場合、スタート直後、集団がばらけるまでは、30km/h以上で走っている時間もかなりありましたが、往路は大体、サイコンの読みで25~28km/h程度を維持。
 復路に入ってからそれがガクッと落ち始めて、復路のタンテニアック~フジェール~ヴィレンヌ・ラ・ジュエルくらいの区間では、20km/hを何とか上回る程度を維持しているくらいとなっていました。

 こうなった理由は簡単で、「十分な休息を取れず、仮眠明けでも力が復活していなかったこと」が一番大きな理由になるでしょう。
 これは、GWの奥の細道1000でも、後になればなるほど、朝から出せる力がどんどん弱まっている感覚があったことで実感していましたが、蓄積していく疲労をいかに最小限に抑えるかについては、走行レポートなどにあまりはっきり現れませんが、非常に重要な課題になると思います。

 なるべく疲労を残さないためには、できるだけ早くPC等に到着し、可能な限り回復を考慮した食事をしてから、できるだけ長く仮眠を取る……。

 いや、そんなことはわかり切っていますが、それを実際に行動として実践するのが、物凄く難しいのですよ……。
 特に復路は、気付いたらズルズルと時間が過ぎていて、走っても走っても借金が減らないという、妙な感覚がありましたのでね……。

 今回のPBPで、私は往復ともにヴィレンヌ・ラ・ジュエルとルデアックで仮眠を取りましたが、最初のヴィレンヌ・ラ・ジュエルでは1時間の貯金を残して再スタートできたものの、次のルデアックは2時間ほどの借金でスタート。
 復路のルデアックは3時間借金スタートで、最後のヴィレンヌ・ラ・ジュエルでは、暫定5時間近い借金を背負ってのスタートになっていました。

 正直、ここからよくランブイエのクローズに間に合わせたものだ……と自分でも思いますが、とにかく、それくらい適切なレスト&リカバリーを想定通りに取るのは難しいです。
 適切に仮眠をとって、十分にリカバリーできた皆様は、特に問題なく完走できているようなので、やはり地脚を強化して、あの連続アップダウンでもヘタれず走り抜けるだけの力を身につける必要があるのかもしれません。

(4)できれば時間外でも最後まで頑張って!
 ACPの関係者による非公式コメントなどで、今回のPBP2019の時間内完走率は、速報レベルのデータでは2015年より少し落ちるだろう、という事が語られているそうです。

 今回のPBP2019は、この記事を書いている2019年9月中旬現在、まだ正式リザルトが出ていないので、トラッキングサイト等の結果から、なんとなく類推するしかないのですが……。
 トラッキングサイトの結果ベースなので、正確性については少々疑問符が付く部分もありますが、有志が調べてくださった内容で、ちょっと興味深い話があります。

 概要をかいつまんで書くと、2015年にDNFした日本人(約50名?)のうち、2019年にリベンジで参加したのは、約半数程度。
 そのうち、時間内完走に至ったのは、わずかに数名程度だった、というものでした。

 これが2015年に時間外でもゴールに到達した人で見ると、時間内完走率がDNFからのリベンジ組より高い傾向があるようで、「時間外でもなんでも良いので、このコースの1,200km全体を走ってみること」が、次回の完走に向けて大きな経験として残る可能性がありそうです。
 (最終的なリザルトが出たら、また検証したい内容ですね、これは)

 前回のPBP2015を往路途中でDNFし、今回のPBP2019を最後まで走った自分の経験を踏まえて、この結果について考察すると……。

 PBP2019の復路の中盤以降は、とにかく想定をはるかに超えて辛い展開が待っていました。
 国内の1,200km、1,000kmブルベを複数、完走した経験を持っていましたし、今年のGWに奥の細道1000を完走していましたが、その時の経験は、あまりあてにならない……というより、国内ブルベの同一距離域を走っている時の数倍くらい苦しい展開でした。

 時間外完走であっても、最後まで走っている皆様は、後半のこうした想定以上にキツい、という展開も一度は経験したでしょうし、距離感も何となく掴めていると思います。
 次回以降、自分の走り方に応じた走行計画を立てる際、「あの時、この辺りからものすごく辛かったよな〜」「この町を過ぎるまでは、絶対安心できないよな〜」という経験がある事が、全く未経験なDNF組と比較したら、非常に大きな武器になるのは間違いないでしょう。

 PBP2019では、100時間以上かけて時間外ゴールした、という参加者もいらっしゃいました。
 また、正規日程中に自転車が壊れてDNFしたので、数日後、現地で買い直してDNFしたポイントから継続して走行した、という、とにかく凄いとしか言いようのない挑戦でゴールまで走ったという方もいらっしゃったそうです。

 どんなに時間がかかっても、最後まで走りきった記憶と経験が残せた事。
 それは、次回の完走に繋がる、大きな武器になると思います。

 次回参加する皆様、命に危険が生じない範囲で、できるだけ最後まで頑張っていただければ……と、今回、最後は本気で死ぬかと思うほど苦しんだDNFリベンジ組の一人が、そんな事を考えています……。

(5)時差調整等、結局どうだった(完走率への影響)
 今回のPBPは、2015年が少々弾丸日程気味で、渡航の疲労も時差ボケもあまり解消しないままスタートを迎えた結果、自滅した、との認識があった事から、渡仏日程を一日早め、車検日の前に一日、何もしない日を挟んで、時差調整などを考えていました。

 その結果ですが……。

 一日程度、長く滞在したからといって、時差ボケがそんなに簡単におさまる事はなかったですね(^^;)。
 ただし、渡航疲れを抜く、という意味では、かなり大きな効果があったと思われます。

 なお、これまで、日本人の完走率が低い原因として、時差ボケ、昼夜の寒暖差、渡航疲労の3つが特に大きいだろう、とされる事が多かったと思われます。
 しかし、走行編の本分中でも触れたとおり、これらは別に、日本人参加者のみが影響を受ける事柄ではないため、実際には「日本人のブルベの走り方が、PBPの完走を目指す走り方と乖離している」事が、完走率が低い一番の要因だと今では感じています。

 なお、もともと日本人の完走率が低い原因とされていた3項目について、今回のPBP2019に参加して思ったのは……。

 時差ボケ:短期に抜くのは不可能。走行中は、短時間仮眠で走り続ける事による蓄積疲労の方が深刻。
 昼夜の寒暖差:日本にも同じくらい昼夜の寒暖差が激しい季節はある。東南アジア、亜熱帯圏の国より断然有利。
 渡航疲労:日本以外にも渡航に長時間がかかる国も多く、日本だけの理由ではない。ただ、影響は無視できないと思う。

 という感じで、今まで語られてきた日本人が不利になる理由については、別段、日本人だけに限った話ではない、という気がします。

 ただし、渡航疲労は、できるだけ事前に抜けるなら、抜いた方が良いですね。
 車検日の前夜にフランス到着、というスケジュールだと、日本時間でほぼ完徹後、短時間仮眠で車検に行って、翌日の本番を迎える、という弾丸日程になりがちです。
 それより一日早く渡仏して、「何もしない日」を挟むのは、ある意味、解決策として良かったかもしれません。

 まあ、反省するとしたら、本当に何もしないのではなく、少し体感時間の調整程度、日光を浴びるために周辺を走っておいても良かったかな、というくらいでしょうか。
 仕事の都合などで、なかなか休みを長く取れない日本人に、一日早く現地入りする、というのは難しいかもしれませんが、対策としては個人的にお勧めです。

(6)オマケ:サイコンは2台用意を推奨
 冗長性を持たせる……という観点もありますが、単純にその方が便利、という観点からのオマケ情報です。

 PBPに参加する場合、サイコンは2台、準備する事を推奨します。
 うち、1台はトータルの走行距離、もう1台はPC間の区間距離の計測に使用すると、走行中、非常に便利です。

 実走時に気付きましたが、PBP2019のコースの距離(総距離、各PC間の距離)は、公式でコースマップを公開していたOpenrunner上で、PC出口~次のPC入口までの距離で計算されていたようです(PC内施設までの誘導路などは含まない)。

 しかし、PCの施設面積が広い場所(フジェール、ブレストあたりは特に)では、PC内の移動だけで数百メートル以上、下手をすると1km以上になる事もあります。
 混雑していて駐輪場所が見付けられなかったりしたら、駐輪場内をグルグル回らないといけない、なんて事もありますので、総走行距離はどんどんプラスの誤差が乗っかっていきます。

 よって、次のPCまでの距離を確認する時、PC間のラップ距離を測るサイコンを併用することで、いちいち誤差を考慮して計算する手間が省けます。
 これ、特に頭がだんだん馬鹿になってくる終盤になると、とても助かります。

 個人的には、総走行距離の測定は、地図表示も兼ねたGPS端末を使用。
 区間距離の測定は普通の無線サイコンなど、機能がシンプルで操作が簡単なものを使うのが良いかと思われます(頻繁に距離をリセットしますので)。

 ちなみに、今回の私のケースでは、ゴールした時のeTrex 30x上の走行距離は1,240kmほどになっていました。
 最終的に、トータルで約20kmの誤差となりましたので、道中、どんどん誤差が積み上がっている間は、区間距離用のサイコンの方しか信頼していませんでした。

 特に、最終区間のドゥルー〜ランブイエ間は、ラウンドアバウト周辺で進行方向を確認する以外では、V3nしか見ていなかった気がしますね……。
 正確な残距離がわかっていればこそ、あの区間は最後まで勢いを維持して走り切れたと思います。

6.やっぱり最後は楽しもう
 なんだかんだ言っても、PBPはお祭りの要素も大きいイベントです。
 それに、このイベントを走ってみると、PBPというイベントだからなのか、それとも普段からそうなのかは不明ですが、フランスという国が「自転車文化」を非常に大事にしている事。
 また、日常的に「弱者保護」が根付いた、本当の意味で「文化的成熟度が高い国」である事を感じさせてくれます。

 あの雰囲気を肌で感じてから、日本に帰ってきて「日本すごい!」系のテレビ番組を見ると、物凄くシニカルな視点で「それに関わってきた人が凄いのであって、別に日本がすごいわけじゃない」と感じてしまうくらいです。
 (というか、ホントに最近の「日本すごい」系の話って、それに携わってきた人がすごいのであって、日本がすごいわけではないと本気でそう思う)

 PBPの雰囲気として、お祭りは地域の皆様だけ、自分たち参加者は走る事に専念しろ、という意見もあるかと思います。
 その考え方、私もそう思う部分がありますし、「とにかく是が非でも完走をもぎ取る」ことが目標なのであれば、間違いなくそうすべきだと思います。

 ……でもね……。

 走行編に色々書いた通り、このコースの沿道風景、とにかくすごい場所を色々通りますから。
 通り抜ける町の皆様の、世界中から集まるサイクリストをリスペクトして下さるあの暖かさ、本当にすごいですから。

 風景をじっくり楽しんだり、沿道の皆様との交流を楽しむ程度の、心の余裕は必要だと思います。
 (特に、ヴィレンヌ・ラ・ジュエルとか、シジュンとか、物凄く歓迎してくれる町もあるしね……)

 SNSへの投稿だって、電波がEやHの場所なら、どうせ文章だけしか送れない(画像を送ろうとしたら、タイムアウトでエラーになる)ので、その程度なら短時間で終わるでしょう。
 その投稿が、家族や仲間への無事の連絡、という人も多いと思いますし、私のように、のちに自分の行動ログとして見返す、という人も多いと思います。

 そういった事を全部排除してひたすら走るだけでは、後から思い出しても「なんか似たような風景の中を走っただけ」という、つまらない思い出だけにならないかと……。

 まあ、SNSで変にリプライ返しをし始めると、無駄に時間がどんどん経過しますが、一方的につぶやく程度なら、時間なんてそんなにかかりません。
 PCで、レストランやトイレ待ちの行列に並んでいる間にできちゃいます。

 とにかく、日本のブルベ同様、PBPも自分なりの楽しみ方を見つけて、その上で時間に間に合うように走れたら、それが一番だと思います。

 好きこそものの上手なれ。
 これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず。

 これらの格言に現れる通り、「楽しみ」がなく、ただキツいコースを走るだけなら、単なる苦行でしかないですし、心に余裕がないと、ちょっとした想定外の事態があっただけで、すぐに心が折れて先に進む力を無くすと思います。
 効率を突き詰めて、ギリギリまで時短を考えるのは、A, Bグループで先頭を争う皆様に任せて、自分たち凡人は、自分なりの楽しみ方で走れば良いと思います。
 (そんな甘ちゃんだから、お前はDNFが多いんだよ、と言われたら、その通りです、としか言えないけど ^^;)

 とにかく、今回、モン・サン・ミシェルまで長駆の寄り道をしながら、時間内完走を果たした日本人がいる、と聞いた時、もう、私は羨ましくて羨ましくて仕方がなかったですよ。
 こんなきついコースを走りながら、そこまで自分の楽しみを追求できるなんて、凄いじゃないですか!

 それに、私は2015年時のDNFからの撤退行の途中、いろいろな国の参加者によるDNFグループで撤退しましたが、彼らの間にあった、あっけらかんとした雰囲気に、「これも一つの選択の結果」と、妙にすっきり割り切れた気分になったものでした。
 そういうところも含めて、PBPのお祭り気分を堪能すれば良いと思います。

 というわけで、私個人としては、日本人参加者の完走率が高くないという件については、「ガチ勢だけでなく、エンジョイ勢も多い」という、趣味としての広さの反映のようなものでもあり、現状では特に気にしなくても良いのではないか、とも考えています。

 まあ、近年は参加者数が非常に多くなり、そろそろPCも手狭に感じられるので、「今後は完走率で各国の人数を定める」なんて対応を取られたら、ちょっと困る結果になりますけどね(^^;)。

 そして最後にもう一度。

 このコース、「海外ブルベとしてはイージーモード」と言われますが、決して「ファンライドイベント」ではありません。
 もともとは「レース」として、到着時間の早さを競うために引かれた、厳しい設定のコースです。

 だから、「完走」を目指す人は、しっかり備えてください。

7.だが、最低限の事はやろう
 私個人の感覚として、少しでもPBPに興味のある皆様は、ぜひ、参加を検討していただきたいと思います。
 体力的に不安だ、言葉の壁をどう乗り越えようか、という心配については、私の経験から言わせていただくと、「体当たりでぶつかれば、大体何とかなる」ものだと思います(あっちで対応してくれる皆様も同じ人間ですから)。

 た・だ・し!

 基本的なルールは守りましょう。
 少なくとも、現地に入る前に、公式サイトにある情報(ダウンロード可能な、配布物ファイルの内容も含めて)くらいは、理解してから行きましょう。

 今回、一部の参加者に対し、懇親会などで「初めてで何もわからない」と言いつつ、常識外れの行動をとる人がいた、と、私以外の参加者からも否定的というか、嫌悪感が混じったニュアンスで語られる事がありました。
 口々に言われていたのが、「何もわかっていないことを自覚していながら、なぜ事前に何も調べていないのか?」という事でしたね(初めてだから、なんて、逃げ口実にもならない戯言だ)。

 また、今回も何名か、きちんとアバンダン宣言せずにどこかに消えた日本人がいたようで、最終日の夕方〜夜にかけて、AJ会長の所にACPから、「この人はどうなってる?」「この人はどこにいる?」という問い合わせが何件もあったようです。

 そういう、基本的なルールも守らず、ACPのスタッフやボランティアの皆様に余計な負担をかける事は、非常に恥ずかしいことだと考えてください。
 というか、日本という国と、日本人参加者の全員を貶める行為だということを理解していただきたいものです。

 自己完結したサイクリストだ、と胸を張れる行動をしましょう。

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コメント
集団走行
これは走りながら関西のまきよさんにお聞きしたことなのですが、欧米の参加者は基本的に男性なら80または84でエントリーするのが半ば前提で、90時間でエントリーするのはグループライド、もしくは女性参加者をアテンドするためという意識が働く場合が多いそうです。
”ソロで走ってタイムを狙うなら90でエントリーしている場合じゃないだろ!?”って間隔みたい。
2019/09/20(金) 13:41 | URL | とり #bi94IFRw[ コメントの編集]
Re: 集団走行
とりさん、コメントありがとうございます。

>欧米の参加者は基本的に男性なら80または84でエントリーするのが半ば前提
>90時間でエントリーするのはグループライド、もしくは女性参加者をアテンドするため

なんと!(^^;)
84時間や80時間ではゴールに間に合いそうもないから、と、
90時間でソロで走ってる日本男子は、戦う前に負けてますなぁ……(笑)。
2019/09/20(金) 20:50 | URL | YO-TA #-[ コメントの編集]
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Author:YO-TA
2018年1月に、東北勤務から再び東京に転勤となりました。
相変わらず、デジカメ片手に、サイクリングやハイキングを楽しんでいます。
突然、突拍子もないことをやらかしますが、それはまあ、ご愛嬌という事で…。

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