日々是遊歩。見て、聞いて、感じて、それを殴り書き。

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行きて帰りし走行記録 PBP2019走行編 Part.6

 これを書いている2019年9月8日夜現在、関東地方には史上最強クラスの台風の接近に関連して、気象系の警報が大量に出ています。

 私の居所は、多摩川に近いですが、いわゆる自然堤防上の高台です。
 多摩川に行くには10〜20mほどの落差のある段丘を下りますし、大雨浸水被害のハザードマップでも、特に影響のない白色メッシュ内に位置しています。
 (というか、そういう場所なので居所に選んだ。そこまで見るか?と、多くの人に言われたが ^^;)

 なので、浸水リスクは低いと思われますが……。

 予測できないのが、「風」の方ですよね〜。
 最大で40mの風が吹く恐れ、とか予報で出ていますが、そうなると、何がどこから飛んでくるかわかりませんので、電線が切れたり何かが吹き込んできたり、大変なことにならないかと心配なわけですが……。

 時の運、と考えて、構えるしかないですね。
 皆様、命を守る対応をしっかりやりましょう。

 では本題です。
 PBP2019走行編の、Part.6をお送りします。

 復路も後半に入ってから、エンドレスで続く細かい登坂を繰り返すコースに体が疲労の限界を迎え、ペースを上げられなくなりました。

 おかげで、復路のルデアックで背負った借金が全然減らない……。

 苦しい中で考えたのが、ヴィレンヌ・ラ・ジュエルからランブイエまでの207kmに13時間を確保し、最後の1ブルベに勝負をかける、という戦略です。
 そのためには、ヴィレンヌ・ラ・ジュエルを0時に出発することが条件となり、それよりできるだけ早くに到着し、休息を十分に取る必要がありますが……。

 ヴィレンヌ・ラ・ジュエルには22:30頃に到着。
 チェックを終わらせ、速やかに仮眠に入ったのですが……。

 最後の13時間の賭けに出た私ですが、その結果はどうなったのか。
 興味のある皆様は、以下のRead moreをクリックしてください。

1.Villaines-la-Juhel ~ Mortagne-au-Perche
 ムシュー、ムシューという子供の声と、瞼越しにやたら明るい何かを突き付けられている感覚で目覚めました。

 「What happen, now?」

 何でか英語でそんな言葉が口から出て……起こし役の子供が、「時間ですよ~」的なことを、付箋のような紙をヒラヒラさせながら言っている姿を見て、やっと頭の回線がつながりました。
 ああ、そうだ、今はヴィレンヌの仮眠所にいるんだ。
 これから13時間で、ランブイエのゴールを目指さないと駄目なんだ。

 大丈夫、起きたよ、の合図として手を振って見せると、起こし役の子供はライトを消して室外に出てきました。
 時計を見ると、0:08分。
 0時ちょうどに起こしに来たとしたら、ずいぶんその子に迷惑をかけたな。

 熟睡感はありましたが、体には疲労がしっかり残っています。
 上体を起こすのも億劫な気分でしたが、枕代わりのレインスーツとヘルメットを掴んで立ち上がり、室外に出てシューズを履きます。
 冷え切った大気が体を包みましたが、さすがに4夜目になると、いい加減にこの寒さにも慣れました。

 レインスーツの上着を羽織り、バンダナやヘルメットを身に着けながらバイクの所に戻ります。
 水は昨夜のうちに水道から補充してあったので、あとは跨って出走すればいいだけ。

 フロントバッグを漁り、携行糧食の最後の一包を食べながらスタートです。
 コースに出たのは0:30頃。
 既にゴールのクローズ(13:15)まで、13時間を切っていました。

 ここから先は、往路では長い長い坂を登って到達した地点ですから、復路は下り基調になって、一気に速度を上げて進めるはずです。

 ……そう思っていたのに、町を出てすぐに下り坂は終わって、またまた長い長い登りを登っている不思議……。
 ルデアック周辺といいこの辺りといい、このエッシャーな地形はどうなってんだ?

 と思ったら、ここも往路と復路では、一部で異なるルートを走っているのですね……。
 そんなことに気付く余裕もなく、延々下っていくはずだと思っていたのに、延々登っているとか、時間がシビアになったこの時間には、ちょっと冗談じゃなく焦らされる要因となりました。

 周囲の参加者も疲労が酷いようで、力なくノロノロと、ときに大きく蛇行したりしながら前進しています。
 もちろん、行き倒れの姿も多く、たまらずコース外に足を止めて天を仰いだりハンドルに突っ伏したりする姿も多く見られます。

 2015年のオフィシャルDVD、ヴィレンヌ・ラ・ジュエル到着のシーンのインタビューで、ここから先の200kmは、今までで一番厳しい200kmになるだろう、というコメントが出ていたことを思い出します。
 もし、その言葉を出発と同時に聞かされていたら、周囲にいるほとんどの皆様が、今、ここでその意味を噛み締めたかもしれません。

 私も、往路のようにペースが上がらないことに焦りを覚えつつも、時間がほとんど残されていないことから、とにかく前に進むことしか考えられない状態になっていました。

 どこかの町(地図で見ると、マメールらしい)に入り、例によって町の中心部へと続く登り坂を登って中央広場付近に出ると……ん?
 案内の矢印版が見当たりません。この先は一体、どう進めばいいんだ?

 GPSの地図の縮尺を街路レベルまで落としていくと……うわ、町の中をずいぶん細かくクネクネ曲がるようにコースが設定されています。
 これを初見で、間違わずに走るのはかなり困難そうです。
 とにかく、少し速度を落として、慎重にラインをトレースして走るしかなさそうです。

 町の中央広場を迂回するようなルートで、大きく回り込んで反対側を直進。
 しばらくはクネクネ不規則に蛇行する大通り沿いを進んでいましたが……ちょっと見た程度では、左折、右折するポイントに、案内ボードが見当たりません。

 途中、ホントにここ?と、GPSの画面でルートを確認している私でも迷うような路地に入ったりもしましたが、そこにも案内は出ていなかった気が……。

 これをGPSなしで走るとか、ちょっと厳しいよな(^^;)。
 途中で足を止めていた参加者も多く、何となく固まって進んでいるうちに、十人くらいのグループが出来上がっていました。

 もしかしたら、ちゃんと案内も設置されていたのかもしれませんが、少なくとも、私は気付かなかったのと、複数の参加者が足を止めていたので、わかり辛かったのは確かでしょう。

 町を出たところで、グループは解散。
 それぞれのペースでの前進に変わります。

 ここでまた、完全ソロ走になったのですが、結果的にこれが失敗。
 さっきまで一緒だった集団の中で、足の合う人達についていくべきでした。

 完全ソロになった瞬間から、またもまたも睡魔が大復活。
 コノヤロー!
 無駄にできる時間はないってのに!

 モルターニュ・オ・ペルシュまであと20km程度なのに、ここにきてまた減速を強いられます。
 道端に車体を止めると、頭がクラっとするくらい酷い。
 高ケイデンスで心拍を上げて……と考えましたが、この時は睡魔の方が支配的になっており、体が思うように動きません。

 どうするか……と考えていると、左前方に明るい場所があり、ベストの反射帯の光がキラキラしている場所が見えました。
 私設エイドのようです。
 デッキチェアの上に、エマージェンシーシートに包まって寝ている参加者数名の姿も見えています。

 あそこで、コーヒーか何か、暖かい飲み物を飲んで、休憩しよう。
 フラフラと誘蛾灯に誘われる虫のように、私はその明かりに引き付けられました。


190818d1.jpg
ここで止まった私設エイド。
皆様、かなりぐったりしていた。
(22日、4:30頃)


 ここの私設エイドは、寄付金程度のお金を募っている様子でした。
 ブルベカード入れから適当な硬貨(多分、1ユーロだったと思う)を、テーブル上にあった貯金箱に投函し、「サムシング、ホット、トゥ、ドリンク?」と、睡魔でグルグルする頭で絞り出せるブロークン丸出しの英語で尋ねると、

 「カフィー? ショコラ?」

 おお、意志は通じてる。

 「ショコラ、シルブプレ」

 ショコラ、つまりはココアですが、ここで頂いたココアは、麦芽粉末飲料(製品名で言えば、ミロ)のような感じの味がしました。
 懐かしい味がうれしい、そして暖かい。

 明け方の冷え込みの中で、これは最高のごちそうでした。
 座って休め、と椅子をすすめられたので礼を言いつつ座ったら……瞬時に15分ほど、時間が飛んでいました。
 寝落ちしていたようです。

 しかし、エマージェンシーシート等を使わずに寝落ちたため、見事に体が冷えてしまい、寒さで目覚めたという……。
 これはいかん、早く体を動かして、内側から熱を作らないと。

 空になったカップをゴミ袋に捨てて、礼を言ってその場を出発します。
 冷え切った体はギシギシと軋みを上げているような感じでしたが、おかげで睡魔は飛びました。

 そして、思っていたよりもすぐにモルターニュ・オ・ペルシュに到着したのでした。


190818d2.jpg
PC13、モルターニュ・オ・ペルシュ
(22日、5:52チェック)


 ここのクローズは3:03だったので、暫定約3時間の借金。
 この後のコースを考えたら5時には到着しておきたかったのですが、想定より1時間遅れました。

 もう無駄にできる時間は残っていませんが、睡魔でグダグダ、体が冷え切って寒い、という状況だったので、内側から熱を作るため、ここであえて食事を入れて体をリセットすることにします。


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往路と違い、人影もまばらなレストラン。
料理の品数も、かなり少なくなっていた。


 コントロールの奥にあるレストランに行くと……うぉう、まさに「死屍累々」の地獄絵図……。

 壁際の床には隙間なく参加者が転がり、2重、3重のラインを形成して内側に広がってきています。
 食事用のテーブルに座っている人も、見た感じで半数は寝落ち。
 中には、フォークやスプーンを皿に突っ込んだ、その姿勢で落ちている皆様もいらっしゃいます。

 圧倒されている場合じゃない、メシだメシ、とレストランの方に進みますが……さて、何を食べたいんだ、俺。

 飲み物は、オランジーナとコーラを迷いなく選択しましたが、食べ物の方はどうするか。
 クーラー内に、フレッシュな生野菜のサラダなどが見えますが、瑞々しくて美味しそうなそれに、イマイチ食指が動きません。

 「ムッシュー、どう?美味しいわよー」

 ふと、そんな感じの声がかかったので振り向くと、複数の種類のパスタを茹でた料理をかき混ぜている女性の姿が。
 これ、往路のアンブリエール・レ・ヴァレーでも似たような料理を食べたな……。
 味が想像しやすかったので、これを頂くことにしましょう。

 「シルブプレ」

 皿を差し出すと、ちょっと待って、と言いたくなる量が盛られました(^^;)。
 う~ん、これ、PBP名物の伸びたパスタだったらきつくないかな……。


190818d4.jpg
というわけで、
モルターニュ・オ・ペルシュでの食事。
PBP名物?のパスタ料理である。


 ですが、予想に反して、このパスタ、美味しかったんですよね。
 確かに日本人の、ここまで1,000km以上を走ってきてミネラル不足な体の舌には薄味すぎますが、バターで下味がついていて、普通に観光中に町中で食べたのであれば、問題なく行けるよな、と感じます。

 味が薄い分は、ジャージのポケットから取り出したペッパーソルトで調整すればよいでしょう。
 最初、一口程度にパラッとかけて味見してみたら……。

 すぐに全体にパッパと振りかけて、貪るように一気に食べました。
 いやあ、ちょっと手を加えたら、無茶苦茶美味しかったぞ!

 今回のPBP全体を通して、食事に関しては前回よりかなり良くなっていたと思います。
 タンテニアックは少々、舌に合いませんでしたが(^^;)、その他のPC、ト途中のバーで食べた食事は、ちょっと一味足しただけで、普通に美味しく食べられました。

 あまりにガツガツ、勢いよく食べたからか、同じパスタ料理を食べていた近くの西洋系の人から、おい、それは何だ?と、テーブルに置いたペッパーソルトを指さされます。

 「ジャパニーズソルト、ウィズ、サムペッパー。ユーウォンナ、トライ?」

 そういって、食べる手を休めずに勧めてみたら、その人も最初はこわごわと、一口分にふりかけて口に運びます。
 その後、「もっと使っていいか?」「もちろん!」で全体にババっとふりかけ、私同様にガツガツ食べ始めました。

 うん、塩が不足しているのは、日本人だけに限らないのか(笑)。
 お互い、物凄い勢いで、一皿分をしっかり完食しました。

 腹に物を入れると、どれだけギリギリな状況でも気持ちが落ち着きます。
 現在の時刻は6時20分頃。

 次のPC、ドゥルーまでは77km。クローズ(9:31)に間に合わせるように走るのは、ちょっときついでしょう。
 しかし、4時間後の、10:30までに到着できれば……ランブイエまで45kmを2時間半程度残せる。

 まだギリギリ、チャンスは残っている。
 急ぐぞ。

 食器を下げようとしたら、ボランティアの方が駆け寄ってきて、トレーを受け取り、アレ、アレ、ムッシュー、と背中を押してくれました。

 19:15出発のNグループのクローズから3時間以上。
 時間だけ見ると、最終組、Vグループ(21:00スタート)もクローズ時間を過ぎているはずです。

 PCも何となく撤収に向けた雰囲気となっており、既にここにいる人たちには、あまり時間が残されていないとわかっているのでしょう。
 メルシーの一言とともにトレーをお願いし、夜明けのコースに復帰します。


190818d5.jpg
モルターニュ・オ・ペルシュを出発。
最終日の朝を迎えた。


 出発時刻は、手元の記録で6:30頃。
 残り122km、時間は6時間強。

 ドゥルーの停車時間を最小限にすれば、まだランブイエまで時間内で届きそうでした。

2.Mortagne-au-Perche ~ Dreux
 Dreuxは、Google Mapなどの地図等での表記は「ドルー」となっていますが、現地で聞いた発音が「ドゥルー」に近く聞こえたので、ウチではそう表記します。

 ドゥルーは復路のみ立ち寄る町であり、この先のコースは私は全くの初見です。
 だんだんイル・ド・フランス方面に近づき、土地の起伏が少なくなってきているはずですが、疲れ切った体には、わずかなアップダウンも体力をゴリゴリ削る要因になってくれます。


190818d6.jpg
最後の夜明けも、
空は綺麗な藍と紫に染まった。


 朝6:30をまわり、周囲は急速に明るくなって行きます。
 コケコッコー、と鶏の声が響くのは、ここ数日の明け方ライドで何度も聞いてきました。

 フランスでも朝を告げる鳥なんだな、お前達。
 日本では、よほど地方に行かない限り、すっかりその声を聞かなくなったニワトリですが、こちら、フランスでは庭に放し飼いされている家もあったりして、なんだか牧歌的な風景が見られる場所もありました。

 さて、周囲は明るくなってきたからか、町の中ではPBPの観戦に出ている人の姿も見られるようになってきました。
 とある町で、道路の反対側、左側の歩道から声援を受けたので、そっちを向きながらヒラヒラ手を振って挨拶返しをして正面を向くと……進行方向が少し右にずれ、歩道と車道の境界の白線を乗り越ガツッ!

 前輪が横に弾かれ、そこで思い出しました。
 しまった、こいつは白線じゃない!縁石だ!

 不意打ちで大きくバランスを崩しましたが、何とか歩道に乗り上げ……いや、このままだと家の壁に激突する!
 慌ててハンドルを左に切って前輪で衝突することを避けましたが、家屋の角が体に迫ってくる……。

 家の角部に右手をついて、手首、肘、肩の関節で衝撃をグッと受け止め、衝突回避&停車に成功。
 もう一度やれと言われても、絶対にできないアクロバットでした……。

 親指と人差し指の間をうまく家の角に合わせて手を着けたので、手首がグキッとなることもなく、体やフレームを壁にこすりつけることもなく、何とか停車終了。
 右手親指の付け根あたりに、ちょっと打ち付けたような痛みがありますが、これ位で済んだのであれば上々の結果でしょう。

 例によって、不幸中の幸いレベルがどんだけ高いのか、という話ではありますが……(^^;)。

 ふう、と一息ついて振り返ると……沿道で観戦していた皆様の顔が、リアルに顔文字の( ゜д゜)ポカーン……になってました……。

 大丈夫だよ、とアピールするため、ひらひらと手を振って見せましたが、「気を付けて~」みたいな微妙な反応が返ってきたのは、まあ仕方ないかな(^^;)。
 小さな町だったので、すぐに郊外に出て、また牧草地帯の中の道を進むようになりました。


190818d7.jpg
で、なぜか道路沿い、
手を伸ばせば触れるくらいの所に、
超巨大な牛が一頭、
ズドン、と突っ立っていた。


 いや、ちょっとお前、デカいよ(^^;)。
 日本の、北海道のブルベで見た別海のホルスタインより、人の頭一つ分くらい、肩が高い位置にあります。

 そして、何なんだよ、その草食動物らしからぬ、筋肉が盛り上がった、立派なガタイは。
 お前一頭で、牛車何台引けるんだ?

 ちょっと姿を収めようとカメラを向けたところ、

 「ンモオオオォォ」(に濁点が付く感じ)

 という、ホルスタインよりバリトンの効いた、重低音の声で抗議されました。
 あまりに見た目が強烈だったので、一体どんな品種の牛なのかと調べてみたら、外見的な特徴は、ベルジャンブルーに似ているような……。

 という現実逃避気味の事をやっているのは何故かというと、アップダウンのキツさに心が挫けそうになっていたからです。
 モルターニュ・オ・ペルシュに向かう道も、往路で散々登ったので、下り基調になるかと少し、期待していましたが、結果的には下ると同じくらい登りが次々出てきて、全然楽ができません。


190818d8.jpg
所々に深い森林がある。
往路にも通っているらしいが、
さすがにはっきりとは覚えていない。

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灌漑用のため池、か?
なお、この湖岸の草地で寝ている人がいたが、
寝返りうったら水に落ちるぞ(^^;)。


 地図で見ると、ヌイイ・シュル・ユールの町に入ったところで、参加者が沢山足を止めている場所があります。
 どうやらバーと、その隣のパン屋さんが、参加者向けに早朝営業中のようです。

 パン屋さんから漂ってくる焼きたてのパンの良いにおいが鼻孔をフルにくすぐってくれたので……時間がないと知りつつも一旦停車。
 マーマレード入りのクロワッサンを買ったら、ゴールまでがんばれ、とマカロンをサービスしてくれたので、そのお礼に、さらにゼリー菓子の包みを一つ購入し、歩道をブラブラ歩きながらかじりつきました。


190818e0.jpg
一口かじってしまった後だが、
このクロワッサンが、
絶品で美味かった。

190818e1.jpg
調べてみたら、ヌイイ・シュル・ユールの
SAS BOULANGERIE TOUFFET
というお店。
個人的に超オススメの店だ。


 モルターニュ・オ・ペルシュで食事をしたばかりで、あまり空腹感はなかったのですが、それでも一気に食べられるくらい、美味しいクロワッサンでした。
 焼きたてでサクサクなクロワッサン生地の中に、トロリととろけるマーマレード。
 立ち寄って良かったなあ、と、単純にそう思えました。

 なお、その後、Youtubeで見た他国の参加者の動画では、このお店、21日〜最終日までは、一晩中、営業していたようです。
 真夜中に立ち寄って店内で休憩したり、クロワッサンやケーキを補給する皆様の姿が動画に写っており、皆様、やはりこのお店に立ち寄ったんだな、と、妙な親近感を覚えたのでした。

 この時点で、私は時間内完走を頑張るか、諦めるか、の間で迷っていました。
 パンク一発でもうアウトになるであろう時間でしたので……。

 そして、ここでも日本人参加者にお会いできたので挨拶をかわします。
 確か、私より後のグループでスタートしておられ、ギリギリ隊だ、と話しておられました。

 では、もっと早く出ている私は、もうダメかもですね、と、半分冗談で言ったところ……ここでとてもありがたい情報を得ることができました。

 ここでお会いした日本人の方、GPSにデータを落とす時間がなかったので、Openrunner(ACPが、公式でコースデータを公開していたマッピングサービスサイト)をブラウザかアプリかで直接、見ていたのですが、それでこの先のコースの詳細な高低差マップを見ることができたのでした。

 現在地からドゥルーまでは、この後、2kmほど先の丘陵を越えたら、やや下り基調のアップダウン。
 ドゥルーからランブイエは、最初に大きく下って、登り返すが、その後はほぼ平坦、とのことです。

 厳しいアップダウン地形は、ここでほぼ終わっており、残りは多少のアップダウンはあるものの、平坦基調……。

 「まだ行けるかもしれませんよ」

 その方のその言葉で、もう何かが吹っ切れた気がしました。

 ここから先、私はなりふり構わず前進することだけを考えて走りました。
 ヌイイ・シュル・ユールの町を出てすぐに道は左にカーブし、丘陵地への登りに突入しましたが、これが終われば、下り基調のアップダウンになる……。

 頂点を越えたところで足の回転を速めるとともに、下りで抵抗が軽くなる分、回転はそのままでシフトアップ。
 グン、と車体が加速して、一気に30km/hオーバーまで速度が乗りました。

 相棒のエンメアッカ号はフロントトリプル、アウター46Tという、かなり小さいリングを採用しています(リアは12-27Tの10速)。
 このため、本当のトップスピードでは不利なのですが、軽い力で速く回せるため、トップスピードまでの加速が早いという利点もあったりするのです。
 疲れた後でも、足を回せばそれなりの速度で走れるギア比を意識した構成が、この土壇場で見事に機能してくれました。

 あとはもう、できるだけその勢いを保ったまま、前進できるか。
 その一点だけに集中します。


190818e2.jpg
確かに平坦に近くなっており、
町に入ってもあまりアップダウンはない。
(22日、8:58頃)


 相変わらず、場所によっては向かい風が吹き付けて来るので、私としては珍しく下ハンをグッとつかんで風に抗います。
 体幹は相変わらず、悲鳴をあげていますが、昨日のタンテニアック以降と比べたら、休んだ分、楽になっています。


190818e3.jpg
最終日も好天に恵まれた。
スタートから、
時々にわか雨があったものの、
本当に良い天気に恵まれたと思う。
(22日、9:54頃)


 とにかく、今は余計なことは考えずに前に進むだけ。
 できるだけ速度を落とさないことを意識しつつ、舗装された後に熱波で溶け、再度固まったように不自然なコールタールの縞模様を見せる、スリッピーな路面を走り続けます。


190818e4.jpg
日が高くなった空の下、
東へと進む。
空には飛行機雲が多数、
複雑に交差していた。
(22日、10:00頃)


 何人の参加者を追い越したことか。
 PC間のラップ距離測定用にしているV3nの走行距離が、自分でもびっくりするくらいの勢いで加算されていきます。

 ドゥルーまで10km程度になったら、周囲は本当に平坦な農地の真ん中を進むようになりました。


190818e5.jpg
ドゥルーまであと少し。
平坦な直線道路を一気に駆け抜ける。


 途中、ちょっと足が合う集団の最後尾に入ったので、しばらくその後ろについていたら……。

 頭上でヴィイイイイン、という音が響きます。
 なんだ、と思ったら、私を含む集団の頭上をドローンが追い越していきました。
 ずいぶん大型のドローンで、撮影用のカメラがしっかり、隊列を捉えているのが見えました。

 もしかしたら、公式DVD等の映像の撮影だったのでしょうか?

 周囲は平坦かつ広大な農地で、道路には電柱も電線もない、という、とても映像映えしそうな場所でしたので、こうやって集団が走る姿は絵になっただろうと思います。
 公式映像で使われたらうれしいのですがね……(この後も、次々参加者が通ったでしょうから、もっと絵になるカットがあるかもだなぁ)。

 走っているうちに、集団の速度が少し遅く感じられたので、タイミングを見て追い越し、さらに進みます。
 この後、丘陵地の縁に沿った道を通り、道路の下をカルバートで潜ってドゥルー市街地に到達。

 街路を抜けた先で、こちらに入れ、と案内しているボランティアの誘導員の姿が見えました。
 ここでは私が数人グループの先頭になっていたようで、後ろから、ついたぞ、という感じの声が上がっていました。


PC14、ドゥルー
(22日、10:41チェック:画像なし)


 ほぼ余裕もなく到着し、すぐ出発したためか、ドゥルーの画像はありません。 

 到着時間のリミットを10:30と考えていましたが、わずかに10分オーバーです。
 しかし、ここのクローズは9:31分。
 モルターニュ・オ・ペルシュで3時間あった借金が、一気に1時間10分に軽くなっていました。

 駐輪場からコントロールに向かうまで、最後に残ったトレイルミックスをザラザラと口に流し込みながら歩き、保冷ボトルにわずかに残っていた麦茶で喉の奥に流し込みます。
 レストランには数名の日本人参加者がいらっしゃり、ここでもばるさんにお会いしました。

 ばるさん、最後に思いきり回した結果、ここまで来て、まさかの負傷……。
 ですが、「悪くならない走り方で最後まで行きます」との事でした。

 私もすぐに出たかったので、オレンジジュースとコーラの缶を引っ掴んで会計し、オレンジジュースはボトルへ。
 コーラはほぼ一気にがぶ飲みした後、すぐにバイクの所に戻ります。

 戻る途中、ジャージのバックポケットに入っていた、先程、ヌイイ・シュル・ユールのパン屋で買ったゼリー菓子をさらに口に放り込みます。
 ジャムを固めて成型したような感じのゼリー菓子で、めちゃくちゃに「だだ甘」な味でしたが、糖分は有難い。
 ここから先の区間で、即発的なエネルギーになってくれるでしょう。

 最後の区間でボトルにオレンジジュースを詰めたのも、何かのスポーツコラムで、「マラソンの終盤の給水所で、オレンジジュースなどのスペシャルドリンクを手にした選手は、ただの水を手にした選手と比べて、最後まで速度が落ちなかった」という話を読んだ記憶があったからです。
 今はもう、最後まで走る事しか頭にはありません。

 コントロールでチェックを受けてから10分後には、バイクにまたがりコースへ。

 時間はまだ11時前。ランブイエのゴールクローズまで、あと約2時間15分。
 そして、残る距離は、最終区間の45kmでした。

 さあ、最後の勝負です。

3.Arrivee a Rambouillet
 ドゥルーのPCを出て、市街地を走行。
 ここはどうしても車も多く、ラウンドアバウトで止まる必要がない、といえども、車との位置関係などを把握して、慎重に進まざるを得なくなります。


190818e6.jpg
ドゥルー駅前を通過。
噴水が凄い。
(22日、10:52頃)


 ドゥルーの市街地は急に終わり、下り基調の森林地帯に入ったら郊外に出たことの合図です。
 よし、下り基調に入ったので増速しよう、と思ったら、思わぬところで急カーブが出現、慌てて安全速度まで減速します。

 その後はいくつか、小さな町の中を抜けながら、広大な平坦基調の農地の中を、時折、思い出したように出てくるアップダウンを越えながら進んで行きます。


190818e7.jpg
ドゥルーを出た後のコース風景。
日差しがまともに照りつけ、
時間によってはすごく暑かったと思う。


 ここから先、下ハンを握る時間が増えました。
 向かい風などの風向きに関係なく、とにかくぶっ飛ばして走りたかったので、体を低くすることが多くなりました。


190818e8.jpg
この辺り、路面が悪い場所もあった。
何だか、一度溶けて固まったような、
不自然なコールタール溜まりが
道の中央にできていた。


 路面はコールタールが出ている場所はスリッピーで、急なハンドル操作をするとツルッといきそうです。
 かといって、轍の位置はガタガタと妙な振動が出て走りづらいため、ハンドル操作に注意しつつ走らせるしかありません。

 途中、オダックス形式で走っているらしいグループに追い越されたので、ちょうどいい、と、ブラケットに持ち替えてその後ろに入ります。
 しかし、このグループ、どうやら最終区間にコースの変更が入ったことを知らなかったらしく、マルソースーの町の中、明確に「直進」の印がついている交差点を、変更前のコースに従い左折して行ってしまいます。
 周囲で見ていた町の人達が、違うぞ、とばかり大声で合図を出しますが、そのまま行ってしまいました。

 私は矢印に従い直進。
 その後、私の後ろにいた2, 3人の参加者は、バックミラーの中から消えました。
 多分、変更前コースに従って、左折していったのでしょう。

 GPSを立ち上げると、スタートの直前、ランブイエ城で赤外転送してもらった最新のコースの線上を走っているのが確認できました。
 ならば問題ない、このままコースに沿って直進する。

 最終区間、ここで完全ソロ走行になりましたが、ブラケットから下ハンに持ち替え、速度を落とさぬように全身に力を込めました。

 驚いたことに、ほんの数日前にコース変更が発表されたばかりだというのに、この、新規に引かれたコース区間にも私設エイドが少数ながら立ち並び、最後の最後、ランブイエを目指す参加者をサポートしようと駆け付けている皆様がいらっしゃいました。
 車のトランクに突っ込んであるクーラーボックスから水のボトルを取り出し、参加者に振舞っている人たち。
 簡素なキャンピングセットを開いて、座る場所を用意している人達。

 何ヶ所かの私設エイドは、この道沿いの町の方ではなく、別の町の皆様(多分、もともとのコース沿いの人達)が急遽、駆け付けた、という雰囲気でもありました。
 そこまでして参加者を応援してくれるなんて……と、色々な意味で圧倒された気分にもなってきます。

 今回のPBPでは、走行中に色々気付いたことがありました。

 前回のPBPのレポートで、「フランスでは川を渡った記憶がない」などと書いていましたが、実は序盤から、かなりたくさんの川を渡って走っていました。
 中には、澄み切った水が流れる清流もあり、巨大なナマズが浮かんでくる大きな淵もあり、とにかく沢山の川がありました。
 前回は、それに気付けぬくらい、視野が狭かったのでしょう。

 また、道の半ばにも届いていなかったのに、「風景に飽きる」などと書いていました。

 今回は違いました。
 ランブイエにゴールするまで。そして、ゴールした後も、風景に飽きることはありませんでした。

 同じ石造の家屋が並ぶ街並みでも、同じ表情の町はありません。
 教会の尖塔の意匠は全て違っていました。
 家々の壁も、木材の枠が多い町、石が縦積みの町、横積みの町、間に詰める土や漆喰の量や、屋根材の色合い、窓枠の意匠の違い、庭を彩る木々や花の種類など、全てが「その町ごとに違う個性」がありました。

 フジェールやブレストのような、近代的な建物が多く目立つ大都市もあれば、驢馬が荷車を引いて現れそうな、中世からその姿を変えていないような趣深い小さな村もあり、どの町にも人の姿があり、生活が見えました。

 多分、前回の私は本当に追い込まれて、これらに気付けないほど余裕がなかったのでしょう。
 それくらい、このPBPに見合った走りができていなかったのだと思います。

 今回も、決して誇れるような結果ではありません。
 終盤はタイムアウトだらけ。最後の最後にこうやって帳尻合わせで全力で走っている始末です。
 そして、今、こうやって頑張って必死に走っている時の速度も、序盤なら余裕で出せていた巡航速度です。

 ですが、少なくとも、最後まで風景を楽しみ、走ることができたのは間違いないと思います。

 サイコンの読みが25km/hを下回ったら、ギアを軽くしてケイデンスを上げるか、そのままパワーを上げて増速するか、地形の勾配を見て考えます。
 下り基調なら増速、少しでも登りに感じたら、ギアを落としてケイデンスを上げて速度を維持。

 ドゥルーでリセットしたV3nのオドメーターが、体感であっという間に20kmを越え、30kmに迫ります。


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農地の中の道が終わり、
森林地帯に入った。

190818f0.jpg
そしてGPSの画面右上に、
ランブイエが見え始めた。
残り、約10km。


 周囲が豊かな森林地帯となりました。
 ランブイエが近付いたことを表しています。
 GPSの画面でも、広域表示、と言っても、10km程度の範囲の表示の中に、ゴールが見えるようになりました。

 だが、まだだぞ!
 まだ安心するな!
 フィニッシュゲートを潜るまで、勢いを落とすな!

 本当にランブイエが近くなりましたが、それでも道は小さな町に差し掛かると登りに転じ、また、森林地帯の中にも結構、侮れない斜度の坂が待っています。
 最後の最後まで登らされるなんて、全く油断がならない……。

 ドゥルーからずっと、かなりの負荷で走りっぱなしの体は、ここで思わずペースを落とそうとしてしまいますが、必死で足を回し続けました。
 体感であっという間でしたが、時計を見れば、相応の時間が経過していることがわかります。
 最後まで、気を抜くな!


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そしてランブイエ市街地が近付き、
4日前、逆方向に向かって走った道筋に出た。


 スタート直後、大声援で送り出された道筋に出ました。
 アップダウンを越えている間に参加者が詰まってきて、それなりの規模の集団になりました。

 ちょっと私の今までのペースより遅いので、追い越そうと増速したら……。

 少し長い下り坂の先に、スタート直後に公道に出たゲートが出現。
 その周囲の路面はパヴェになっています。

 うお、速度が絞られていた理由はこれか!

 まともに高速でパヴェに突っ込み、物凄い振動と衝撃が車体と体を揺さぶります。
 ハンドルまわりから落下物なし。
 体の方は……落車を防ぐため壁について軽く傷めた右手首に傷みが走りましたが、もう気にせずに走り抜けます。

 しかし、よくパンクしなかったぞ、Vredestein Fortezza Dura Lite。
 メーカーが耐パンク性に絶大の自信を持っているタイヤだけあり、この程度、何でもなかったようです。

 その後、ランブイエの国立牧羊施設の敷地沿いに進み、ランブイエ城近くのゲート。
 5日前に雨の中、車検のために潜り、スタート前に高揚する気分とともに潜ったそのゲートを抜けます。

 ここもパヴェでしたが、構わず突っ切りました。

 そこから先は、園内道路。
 ランブイエ城に向かう観光客とともに、PBP参加者やその家族、完走してホテルへ向かう人達や、仲間を待っている人達など、多くの皆様でごった返す地帯となりました。

 さすがに、ここを全力疾走で抜けるわけにはいかず、それでも遅い集団はなるべく追い越して進み、車検などが行われた大テント方面へと向かいます。

 周囲からは、物凄い声援が飛んできます。
 さすがにスタート/ゴールだけあって、これまで通過してきたどのPCよりも、どの町の中よりも多数の、多国籍な皆様が集まっていました。

 最後のフィニッシュゲートが見え始めると、集団は少し、増速しました。
 遅れぬように私も増速し、そして、ゲートをクリア。

 思わず、天に向かって右手を突き上げていました。

 その後、配布物受け取りに向かった建物前に設置されたセンサーを通り、駐輪場にバイクを止めます。

 この時、まだ13時になっていませんでした。
 背中のポケットからスマートフォンを取り出し、周囲の風景を撮影。
 ランブイエ到着をSNSに報告し、正式な記録となるであろうスタンプをもらいに、大テントへと急ぎます。


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GOAL、ランブイエ
(22日、12:55チェック)


 このスタンプチェックが正式記録ならば、走行時間は89時間40分。
 最後の賭けに勝ちました。
 残り20分のギリギリでしたが、なんとか時間内完走を達成です。


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全てのスタンプが埋まったブルベカード。
こちらは往路。

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そして、復路。
この2枚を撮影するとき、
手の震えが止まらず、
手振れ補正のありがたみを痛感した。


 チェックを受けた後、「スモールプレゼント、フォー、ユー」と言って、首にメダルをかけてもらいました。

 三月下旬生まれという、幼少期から体力的な理由でスポーツ関係では良い経験など一度もなかった私が、まさか誰かからスポーツでメダルを授与してもらえるとは。
 しかも、世界中の人々が集まる場所で。

 認定処理(半年ほど、と言っていたか?)が終わったら、完走時間を刻印したプレートがブルベカードとともに郵送されるので、それをこのメダルの四角のくぼみに貼ってくれ。

 そんな説明も、どこか遠くから聞えている気分です。
 その他、簡単な事務的な説明があった後、「アゲイン、コングラッツ!」握手でゴールチェックは締めくくられました。

 その後、完走報告をSNSに上げようと思ったのですが、気の利いた言葉が全然出てこず、「語彙力枯渇」という素っ気ない一言が、完走メダルの画像とともに電子の世界へ送られます。

 日本ではちょうど、夜のゴールデンタイムだったからか、物凄い数の祝福のリプライを頂きましたが、私がそれに気付くのはフランス時間の翌朝です。
 この時点でスマートフォンのバッテリー残量が20%を切り、自動的にSNSのクライアントアプリケーションのプッシュ通知がOFFになっていましたので……。


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とにかく、手にすることができたメダル。
この時はまだ、頭がふわふわしていた。


 その後、完走後の食事が振舞われるテントに行き、列の後ろについていると、「ヘイ!」と声がかかって前に来い、の合図が出ました。
 いいのか?と思って前に出て、自分でいいのか、と身振りで示すと、胸に下げていたメダルを指さされ、サムズアップが返ってきました。

 ここの食事、ボランティアの方なども利用していた(多分有償で)ようなのですが、完走者優先で準備していただけたようです。
 並んでいた数名の皆様からも、「ブラボー」という声や小さな拍手などが飛んできて、まさに今、自分がヒーローとして見られていることがわかり、何とも言えない気分になりました。


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そして頂いた完走後の食事。
ターメリックライスとチキンのカレーが、
ものすごく美味しく感じられた。


 テントを一通り見回しましたが、知り合いの姿はないようです。
 手近な場所に腰を下ろして食事にします。

 ゴールしたのは確かなのですが、何をどう表現して良いかわからず、ぼんやりした気分の中にいました。

 今回、とりあえず私は90時間以内にランブイエにゴールできました。
 しかし、後半、ルデアックからドゥルーまでの6箇所のPCをタイムアウトしています。

 なので、これで完走として認定されるかどうかは、ACPの裁定待ちです。
 とりあえず、今はあくまでも「時間内完走」であり、自分から「認定」とまでは言えないよな、と考えています。


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センサーによる各PC等の通過状況。
往路のヴィレンヌ・ラ・ジュエルは、
センサーがPCの出口側にあったので、
PC出発時間が記録されている。


 それにしても……厳しい道のりでした……。

 4年前のDNFから始まった2019年の挑戦は、なんとかギリギリで最終ラインを超えられた、というところでしょう。
 途中、やめようと思った事はなかったですが、時間内完走を諦めよう、と考えた事は、21日以降、何度かありました。

 なぜやめなかったか、と聞かれたら……。

 よくわかりませんが、頭と体が勝手に次の展開を考えて、それに向けて動いていった、という感じなので、本当になんと答えて良いのやら。

 特に、最終区間で最速のグロスアベレージを叩き出しているとか、本当に意味がわかりません。
 あの区間は、今思い出しても、なぜここまで頑張れたのか、自分でもわからないのです。
 しかし、あれ以外の行動は考えられませんでしたし、それしかできない状態に追い込まれていたのが正直なところです。

 しかし、本文中にも書いた通り、あの時の自分なりの「必死」は、序盤、スタート直後なら普通に出せた力だったと思います。
 その力を出すのに、あそこまで必死にならないと駄目だったのですよ、最終的には……。

 そして、このコースを走り終えた直後から、今でも持ち続けているPBP2019の率直の感想ですが……。

 やはり、この1,200kmは厳しい。

 ブルベの最高峰だ、4年に一度のお祭りだ、とは言っても、もともとは「レース」として始まったイベントです。
 コースはとてもではないですが、「ファンライド」とは言えません。

 現在参照できる非公式なリザルトでは、PBP2019の全体の完走率は73.3%だったそうです(2015年は78.5%で、今回は少し距離は短かったが、完走率は落ちている)。
 今年の6月中旬までにSRを取得できる世界中の強者が数千名、集まって、その1/4以上が途中で走行を断念してしまったコースです。

 海外ブルベとしてはイージーモード、とよく言われており、確かに、PCまで行けば、大抵の事は何とかなるので、そういう部分はあるのでしょうが……。
 今年の5月に開催された、奥の細道1000と、どちらがきつかったか、と聞かれたら、あの時の倍くらいPBP2019の方がきつかった、というのが私の感想です。

 とにかく、現在は楽しかった、に記憶が変わってきているのが、我ながら恐ろしいところではありますが。
 今の段階で、「また来年も走ろうね」と言われても、日本人特有の曖昧な笑顔を残してスルーするでしょう。

 しかし、PBPは4年に一度、なのですよね……。

 多分、あと2年ほどしたら、「今度こそ、完全時間内完走だ!」なんて騒ぎ始める気がします……(我ながら、もはや病気の域である……)。

(続く)



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YO-TA

Author:YO-TA
2018年1月に、東北勤務から再び東京に転勤となりました。
相変わらず、デジカメ片手に、サイクリングやハイキングを楽しんでいます。
突然、突拍子もないことをやらかしますが、それはまあ、ご愛嬌という事で…。

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