日々是遊歩。見て、聞いて、感じて、それを殴り書き。

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「自転車道」の基準を調べてみた。

 知恵熱でも出るかと思いました・・・。
 原因は、今回の記事を書くにあたって、複数の行政文書に目を通して、あれこれと調べ物をした事です。

 いやあ・・・行政文書って、とにかく構造的に読みにくい(^^;)。
 規定の根拠となる法令の条項に飛んで確認しないとよく分からない部分があったとしたら、その法令の条文だけでなく、根拠法の目的や、関連する施行規則の内容まで見ないと、正確な話が分からない部分が多々出てきますし、類似の文書の内容との間には、微妙な齟齬があったりするのも珍しくないわけで・・・。

 慣れない事はやるもんじゃない、と、痛感しましたよ(^^;)。

 で、このネタを書きながら、色々と、昔のことを思い出していたのですが・・・。
 そういえば、私が子供の頃は、自転車(何の変哲もないママチャリ)が、町内会のイベントやスーパーの抽選会では、目玉賞品の一つだったよなあ・・・。
 (当時、ママチャリ1台が5~6万円程度で、1台買ったら5年以上、乗っていたよね・・・)

 当時、子供達の憧れの自転車だった、ブリヂストン・ロードマンなんて、高嶺の花だったよなあ・・・。
 まあ、でも、世代的に、ジュニアスポーツ車に乗ってた記憶があるんだけど(^^;)。
 (可変ライトとか、電子フラッシャーとか、電池が切れたらもう放置、という無意味な状態で ^^;)

 では本題です。
 思い返せば、2年前の秋。
 仕事で訪れた青森県十和田市内で、偶然、こんな場所を見つけていました・・・。


15121201.jpg
自転車専用道の標識のある階段。
「なんぞこれ?」と思って、
ツイッターに投稿した記憶がある。


 その時は仕事中でもあり、そのままスルーしてしまっていたのですが、時を経て、これが「青森十和田湖自転車道」という大規模自転車道の一部である事を知りました。
 それを知ったきっかけは、時折、私のブログでも触れている、旧道・廃道探索レポートサイトとして有名な、「山さ行がねが」さんでした。

 この、「山さ行がねが」さんの中で、最近(2015年12月)、この自転車道の、十和田市焼山側の整備区間について、全線走破レポートが掲載され、そこにあった焼山側の自転車道入口の写真が、全く同じ場所だったという!
 驚いたとともに、この階段の先がどうなっているのか、レポートの続きが更新されるのをワクワクしながら待ち続けていましたよ、ホントに(^^;)。

 結果、この先にある道は、どうにも「微妙」な道である事がわかった訳ですが・・・(いや、個人的には、ちょっと走ってみたい。新緑の季節と、紅葉の季節は風景が凄そうだけど、新緑期は雪が残ってるかも ^^;)。

 しかし、微妙な道だな~、と考えると同時に、何でこんな道になったのか、どうしてこんな構造物が設置されているのか、という疑問が湧きあがってきました。
 そして、自転車道の整備を行う時に従う技術基準などがあれば、その疑問も解消するかも・・・という思いつきで、昼休みの手慰み程度に情報をあたってみたところ・・・。

 あら? これはちょっと、色々面白い話になってしまったかも・・・。

 という訳で、今回は「自転車道の設計を行う時の基準って?」という話を取り上げてみます。
 なお、内容的に、今回のネタを思いついたきっかけである、「山さ行がねが」さんの、青森十和田湖自転車道の実装レポートを読んで頂いた後の方が、わかり易い部分が多いかと思います。
 (とにかく面白いので、自転車乗りの人も、そうでない人も、一読をお勧めしたい ^^;)

 とりあえず、今回は私的なまとめなので、そちら方面の専門の皆様から見れば、まだまだ足りないよ、誤解があるよ、という状況かもしれません。
 また、行政文書に関する話が多く含まれますので、色々、「お堅い」です(^^;)。
 (いや~、毎度毎度、もっとわかり易くしてくれよ、と思いますね、法令だの何だのについて調べると ^^;)

 それでもいいよ、読みたいよ、という皆様は、以下のRead moreをクリックしてください。


 そんな訳で、本編です。

 先日、「山行が」さんの青森十和田湖自転車道のレポートを読んでみた結果、この自転車道に出てくる不思議な構造の数々(自転車を押さないと駄目な階段の連続、ありえないほど繰り返す九十九折り、突然出てくる非常停車帯らしい構造物)に、「なぜこんな構造が必要とされたのだろうか?」という疑問が湧きあがってきました。
 何度かレポートを読み返すうちに、その疑問は「ここが自転車専用道として整備される時に、準拠した構造基準などを見れば、答えがわかるではないか?」という所に至りました。

 では、実際に道路行政における自転車道(自転車専用道)は、どのような基準に基づいて設計・整備されるかについて、私的に調べてみた結果についてまとめて行きましょう。

1.道路整備に関する法体系など
 まず、自転車道=道路に関係する内容だと思われますので、情報を求めて覗いたのは、最近、なんだか色々縁があるような気がする(^^;)、国土交通省のホームページです。
 この中に、「道路技術基準の体系」というページがあり、そこで法体系等が示されています。

 自転車道の設置の根拠法は、当然ながら「道路法」になります。
 この法律は・・・まあ、説明するまでもないですが、「道路網の整備を図るため、道路に関して、路線の指定及び認定、管理、構造、保全、費用の負担区分等に関する事項を定め、もつて交通の発達に寄与し、公共の福祉を増進することを目的(道路法第1条より)」とした法律です。
 (なお、「道路法」はあくまでも道路網の整備について定めたものであり、良く話題になる「道路交通法」は、道路の利用上の危険防止等のルールについて定める法律なので、両者を混同しないように注意!)

 この「道路法」の第六節(第48条の13から同条16までの内容)に「自転車専用道路等」という定めがあり、自転車専用道の指定、道路等との交差時の措置、通行の制限などに関する基本的な考え方が示されています。

 なお、道路法の中で示されているのは、あくまでも「基本的な考え方」であり、具体的な構造形式(幅員、勾配、路盤材料等)については、別途、政令で定められています。
 その政令が「道路構造令」であり、日本全国に設置されている道路は、基本、この道路構造令に従って設計・整備・管理がなされています。
 とはいえ、道路構造令に示される内容も、かなり大枠の話であるため、実際に様々な現場で道路を設計・整備する場合の細かい取り決めについては、さらに詳細に噛み砕いた「技術基準」等に基づいた対応が行われています。

 この時点で、色々絡み過ぎて、訳がわからん、という悲鳴も聞こえてきそうですが、わかり易い理解のための魔法の言葉、「世の中、そういう仕組みなんだ」という形でご理解いただければと思います(いいのか、それで? ^^;)。

 まあ、この辺り、もっとうまく説明して下さる方がいらっしゃると有り難いなあ・・・(^^;)。

 あ、一応、断っておきますが、今回のネタにしている自転車道の設計・整備の基準は、「自転車の走行の用途のために整備される道路」(つまり、一般道とは別に、独立して整備される自転車道)のことであり、国道などの幹線道の車道に設置される自転車レーンや、歩道上の自転車通行帯の設置基準ではありません。
 自転車レーンなどは、「道路構造令」などに定めがある構造なので、気になる皆様は、別途調べてみてください・・・。
 (そちらとの対比なども行おうかと考えたが、内容が非常に難解な部分もあるので、今回は諦めた。行政文書は、それに慣れていないと非常に読みづらいものなのだ・・・)

2.自転車道の整備について
 さて、それでは自転車道の整備に着目して、道路行政上の位置付けを見ていくことにします。

 国土交通省の「道路技術基準の体系」のページのツリー図をもとに見て行きますと、自転車道は [道路法] → [道路構造令] の流れからもう一段下った派生分野の中で、 [幾何構造] の分野に含まれています。
 この、 [幾何構造] の分野では、「道路の標準幅員」「歩道の一般的構造」などの技術基準に加え、最近話題の「ラウンドアバウト交差点」に関する取り決めや基準等、とにかく道路の「形状・構造」に関する基準が定められています。

 この [幾何構造] の分野の中に、「自転車道等の設計基準について(昭和49年3月、都街発第63号、道企発第91号)」というPDF文書があり、これが事実上の自転車道の整備に係る技術基準になると考えられます。

 つまり、自転車道を単体で整備する場合には、道路法、道路構造令に加えて、さらにブレークダウンした行政文書である「自転車道等の設計基準について」に定められた内容を遵守しなければならない、というのが、道路行政上の定めになるでしょう。

 この「自転車道等の設計基準について」では、道路幅員、カーブの最小半径、最大勾配など、かなり詳細な内容が定められています。
 例えが適切かどうかはわかりませんが、「自転車道の設計・整備のマニュアル的な文書」といっても良いかもしれません。

 では、この「自転車道等の設計基準について」を読み解く事で、国が考える「自転車道」の姿が見えてくるのではないか・・・。

 という訳で、次の項目では、その内容について、詳しく見ていくことにしましょう。

3.「自転車道等の設計基準について」を読み解いてみる
(1)目的、用語定義等
 「自転車道等の設計基準」(以下、「設計基準」という)は、その他の(例えば、道路構造令などの)道路の構造等について定めた政令、技術基準と比較すると、ページ数は非常に少なく、A4用紙7枚に収まるコンパクトさです。

 これは別に自転車道を軽く見ているからではなく、多くの内容を、道路構造令や他の道路の技術基準を準用する形で定められているため、というのが理由です。
 ページ数が少なければ軽いのか、という点については、印刷物が物理的に軽くても、行政上の重み付けとしては、他となんら変わらない位置付けになります。

 この技術基準はPDFファイルで公開されているので、その内容については誰もが目にすることができます。
 なので、私的観点でその内容について見ていことにすると・・・。

 まず、技術基準の目的について。
 これは、「自転車道等の技術的基準を定め、合理的な計画、設計、施工を行うのに資することを目的とする」という、まあ、当り前の内容が示されています。

 その次に来る、自転車道等の用語定義の中に、少々見慣れない単語が出てきます。
 「A種の自転車道」と「B種の自転車道」というのがそれです。用語定義を見てみると、

A種の自転車道:B種の自転車道以外の自転車道
B種の自転車道:自転車道等のうち、屋外レクリエーションを主たる目的として設置されるもの

 という形になっており、一般的な用語として使われている「サイクリングロード」等の多くは、「B種の自転車道」の区分に入ると思われます(逆に、A種って何なのだろう?しいて言えば、産業道路の自転車版などがあれば、そうなるのか?)。

 なお、その他、自転車道に関する定義としては、以下の物があります。

横断自転車道:自転車又は歩行者が車道部及び鉄道を横断するために設けられる自転車道等の一区間

 自転車道のうち、車道や鉄道を横断する部分については、こういう定義になるようです。
 なお、横断歩道などに併設される事が多い「自転車横断帯」などは、おそらく、道路構造令準拠になると思われますので、両者を混同しないように注意しましょう。
 (これだけでも色々ややこしい、と思った方も多いと思われるが、実際には、これでもかなり平易にまとめたと思っている。この記事を書くために、各種規程が入り組んだ状況を読み解こうとした時の、私の頭痛度を理解いだたけるだろうか・・・)

(2)構造に関する規定
 自転車、という車両(軽車両)が走行するための道路であるためか、技術基準には自転車道の設計速度についても規定がされています。
 設計速度については、標準値と地形等の要因でやむを得ない場合の最低速度が定められており、先ほど出てきたA、Bの種別に、以下の通りとなっています。

A種:標準15km/h、最低10km/h
B種:標準30km/h、最低10km/h

 ・・・あら?

 B種の自転車道って、意外に高速走行することを想定した規定になっていたのですね。
 それにしても、「レクリエーションを目的とした自転車道」という定義をもとに見てみると、B種の設計速度って、なかなか妥当なラインに設定されているように見えるのは私だけでしょうか?
 (ブルベを走っている経験上、これより高速になると、風景を楽しむ余裕がなくなる程度のラインだと思われる)

 反対に、最低速度を見てみると、国土交通省としては、自転車道における円滑な走行を確保するための最低の速度は10km/h以上である、という考え方が見えてきます。
 以前、何かで公的機関より、「歩道に設置された自転車通行帯では、歩行者の安全確保のために自転車は徐行しなければならない。その徐行速度とは5km/h程度である」という見解が出された事が話題になった時期があったかと思います。
 この国交省の設計基準を見る限り、「歩道上の自転車通行帯は、自転車道として不適格な構造である」という見方もできるわけですね。
 (もちろん、歩道上の自転車通行帯は、この「自転車道等の設計基準について」に基づく自転車道とは違う規定(道路構造令など)で整備されているので、そのままあてはめるのは不適切であると私は思う。また、上に書いた事は私的な解釈なので、もっと正確な解釈があれば、ご意見、ご指導などお願いします!)

 さて、道路構造としては、車線幅(標準で1m、やむを得ない場合0.75m。意外に広い)や、カーブの最小半径等の規定もありますが、最も気になるのは縦断勾配(つまり、坂道の勾配)だ、という人が多いのではないかと思います。

 設計基準に示された、自転車道の最急縦断勾配は、5%です。

 ・・・おい、緩すぎないか? それは坂か? という声が、主にヒルクライマー的な皆様から響いてきた気がしますが(^^;)、ちょっと待ってね、突っ込みタイムは後で取るから、という事にして、話を進めます。
 (私的な感覚では、5%を越えると急坂なのだが・・・ ^^;)

 設計基準の規定を正しく説明すると、最急勾配は、それが連続する区間の制限長とともに、以下のとおり定められています。

勾配5%、100m以内
勾配4%、200m以内
勾配3%、500m以内


 そして、各勾配の区間が制限長を越えて連続する時は、制限長に達するごとに、3%未満の勾配区間を100m以上、設置することとされています。
 また、自動車の車道に併設して設置される場合で、上記制限以上の勾配、延長となる場合には、自転車道は別途、ルートを設定することが望ましい、とされていますが・・・。
 日本の道路事情を考えた場合、そんな余裕は多分、ないでしょうねえ・・・(^^;)。

 なお、安全施設やトンネルについては、道路構造令に従うように規定されています。
 これは一般的な国道などの安全施設やトンネルの規定(ガードレールとか照明とか)と同じなので割愛します。

4.この基準の内容をもとに、色々考えてみた(突っ込みタイムとも言う)
 さて、そんなこんなで、「自転車道等の設計基準について」の内容を見てきました。
 この設計基準は、先にも書いたとおり、「自転車道等の技術的基準を定め、合理的な計画、設計、施工を行うのに資する」ことを目的としており、自転車歩行者道や歩道に設置された自転車通行帯の設置基準等とはまた異なる道路(自転車で通行することを目的とした道路)の設計・設置のための基準です。

 実際のPDF文書を見て頂くと、かなり妥当な内容の規定が多く見られる反面、それでいいの?と首を傾げたくなるような規定もあるかと思います。
 特に、坂の縦断勾配については、現況で、もっと急な斜面を普通に登っているじゃないか、というツッコミが多数、あったかと思います。

 実際、最大斜度が5%、延長100m以内という条件の道路となると、日本の地形を考えた場合、かなりだだっ広い平野でもなければ設置できないでしょう。
 こう考えると、「サイクリングロード」あるいは「自転車道」とされる道の多くが、河川の堤防上に指定されているのは、まあ仕方がないところなのかな、という気がします(まあ、多くは自転車専用道でなく、自転車歩行者道ですが)。

 で、ここから先が、私が個人的に色々考えた、この技術基準が、なぜこのような形になっているのか、という部分になりますが・・・。

 まず、この設計基準が定められた年代を見てみましょう。
 先程、文書名を書く際に、わざわざ公示された年月を書いておきましたが、この設計基準が国交省の前身である建設省から公示されたのは、昭和49年3月です(最終改正が、昭和49年11月)。

 昭和49年は、西暦に直せは、1974年。
 今から40年も前の話になります。

 40年前の当時、世間はサイクリングブームに沸いていました。
 では、その頃のサイクリングを取り巻く状況がどんなものだったのか、をちょっと調べてみたら・・・。

 ブリヂストンサイクルから、ブリヂストン・ロードマンが販売開始される(これが1974年)。
 荘司としお氏の、自転車漫画の古典的名作である「サイクル野郎」の連載が開始される(これも1974年)。

 こうした世相を見る限り、当時のサイクリングブーム、サイクリングを楽しむ人が乗っていた自転車は、長距離旅行に適したランドナーやキャンピング等が中心であったと思われます。
 サイクリングの一般的な楽しみ方は、現代のように、ロードバイクで一気に長距離を走るのではなく、キャンプ用品一式など、とにかく重い装備を持って、ゆったり自分のペースで旅を行う事が主流だった時代だと思えば良いかと思います。

 この「自転車道等の設計基準について」は、そんな時代のサイクリング事情をもとに定められた、自転車道の設計・整備のための基準だと考えたら・・・。
 この設計基準にある色々な規定(そこそこ高速で走る事を想定し、勾配は緩めに保つ。急勾配の場合、途中で一息つける区間を設ける)がどうしてこうなったのか、理解できるような気分になってきます。

 「山行が」さんこと、「山さ行がねが」さんのレポートでは、この自転車道の焼山側区間について、実走した上で(文字どおり、整備区間の全てを走破して)、以下の奇妙な構造物の存在をレポートしています。

・階段、階段、また階段(押し歩き用のスロープが真ん中にある)
・徹底的に緩勾配を確保したかのような九十九折り(階段+スロープの方が早そう?)
・必要性があるか不明な「緊急停車帯」

 これらの構造物のレポートを前に、まあ、私も最初は、「これでサイクリングロードとか、設計した人はサイクリングをどういう物だと考えていたんだ?」と突っ込みたくなりました。

 しかし、この設計基準の存在を知り、その公示時期と、青森十和田自転車道の事業着手時期(これも昭和49年だったらしい)が、あまりに見事に符号すること。
 そして、その年代の自転車趣味の主流(ランドナーやキャンピングによる長距離自転車旅行)等を考慮した結果・・・。

 この青森十和田自転車道の焼山側は、こんな構造になっても仕方がなかったんじゃないかな、と、考えるようになってしまいました。

 当時の自転車乗りが乗っていた自転車(ランドナー、キャンピング)は、フレーム重量だけでも12~15kgあります(ロードマンのフレーム単体重量が、13.5〜14.0kgくらいだ)。
 この上に、さらに数日分の旅行装備(これも10~15kgになったはず。当時の装備だったら、もっと重かったかもしれない)を積んだ場合、車体だけでも30kg近い重量になったと思われます(日帰り装備でも、20kgくらいになっていたかもしれない)。
 現代のように、コンビニもなければ、自販機もそれほど多く設置されていなかった時代ですから、補給食もドリンクも、相当の量を、車体に積んで走ることになったでしょう。

 反面、現在、ツーリング等に使われるロードバイクは、吊るし売りの完成車でも、フレーム重量は10kgを切るのも珍しくはありません。
 そして、コンビニや自販機があちこちに設置され、財布と携帯電話があれば、緊急時の対応にもほとんど問題がなくなっていることを考えると、日帰りツーリング装備程度であれば、40年前の半分の15kg以内に納める事も簡単でしょう。

 つまり、これだけ車重や装備が変わっている上に、インフラの整備状況(道路、流通、通信網の整備)も進んだため、当時と現代では、普通に考えて「走る大変さ」が全然違うのです(どう考えても現代の方が格段に楽だ)。
 しかも、ランドナーやキャンピングについているブレーキはカンチレバーブレーキであり、当時のカンチレバーブレーキは、現代のロードバイクのキャリパーブレーキやMTBのVブレーキなどと比べると、制動力は弱くなります。

 こうした時代背景を考えると、この基準を制定した際に、当時の自転車事情に詳しい人が席を連ねていたとしても(いや、絶対に連ねているはず。検討委員会や審議会の議事録が残っていればわかるのだが、さすがに見つからない)、万人に供用する場として「自転車道」の構造を考えたなら・・・。
 できるだけ楽に走れて、安全な道とする事が基本条件となり、「それなりの高速走行が可能」「緩勾配で」「ゆったりしたカーブ」の道を設定することは、別段、おかしい話ではないと思います。

 現代の自転車乗りであれば、「10%の登りなんてご褒美デース!」という感覚もあるかもしれません(申し訳ないが、私にはない ^^;)。
 しかし、それは軽量・軽装なロードバイクに乗って走るからであり、数日分の旅行装備に、キャンプ用品一式をすべて持ち歩きながら走っていた時代では、一般的な感覚からは外れるかもしれません。
 (ってか、現代の自転車乗りの皆様も、数十キロにわたってコンビニも自販機もない道で、重装備で30kgくらいになった車体を抱えて10%の坂に登りたいと思います? 私は絶対に嫌ですよ ^^;)

 まあ、それ以前に、大規模自転車道は、子供からお年寄りまで、性別問わずにレクリエーション目的で自転車(ランドナー、キャンピングだけでなく、ママチャリ的な車体も含まれると思う)に乗るための道路ですから、坂でハァハァしたり、列車を組んでロードレースの練習をする場ではありません。
 それを楽しみたい人は、それに見合った場所に行ってね、というのが、(当時)建設省のスタンスであり、その点は現在も変わっていないと思います。

 とにかく、基準の策定年代の感覚で見れば、ここを走る事が前提になる車体が「重装備」の車体ですから、現代のサイクリング用の自転車であるロードバイクやMTB等のように、フレームが軽量で強力な制動力を持ったブレーキを装着した車体の感覚で物を言うのは、少々酷な話でしょう。

 逆に、今の自転車事情に詳しい人達が、今から40年後の自転車趣味の世界を正確に予測して、それに符合した道路の基準を作れるでしょうか?
 (自転車趣味の人達が、40年後の自転車趣味の世界を、想像で語るのでも良い。そして、それがどれだけ現実と同じものになるだろうか?)
 私は、かなり難しい話だと思います。

 例えば、「山行が」さんのレポートを読み返すと、青森十和田湖自転車道は、階段だらけの斜面区間を登りきって高原区間に出た後で、平均勾配6.3%で延長800mという区間に差し掛かります。
 そして、そこは横道に逸れるように、非常停車帯(長い急坂下りの峠道で、故障した車を突っ込ませる、あの停車帯に似ている)がいくつも設置された、不思議な道路になってしまいます。

 しかし、平均勾配6.3%で延長800mという地形は、設計基準に適合させる場合、最急勾配である5%まで勾配を緩くして、制限延長である100mに至るたびに、3%勾配の区間を最低でも100m、挟まなければならなくなります。
 一方で、そんな道路を設置しようにも、地形的に余裕がなく、基準を満たすことはできそうにない、となった場合・・・。

 おそらく、この自転車道を設計した技術者も、色々悩んだと思います。
 その結果、安全性を担保するための構造として、道路脇に逸れる築山状の非常停車施設を設置することとした可能性があります。
 そして、焼山側の、急斜面地帯では、できるだけ勾配を緩くとるように、何度もしつこく繰り返す九十九折を設置するようにて対処し、緩斜面を確保できない区間は、やむなくスロープ付き階段として、事故の無いように押して通ってくれ、という形にしたのだとしても、仕方がないことだと思います。

 どちらにしても、事業着手時期を考えると、青森十和田自転車道は設計基準ができて、最も初期に設計・整備が開始された自転車道であり、まだまだ試行錯誤の段階であったとしても仕方がないでしょう。
 結果的に、現代の・・・もしかしたら、事業着手当初の感覚でも・・・かなりズレた雰囲気の構造物が多く並ぶ、おかしな自転車道になってしまったのは事実です(ここを擁護するつもりは全くない。さすがに、あれは異常だ ^^;)。

 しかし、だとしても、色々と時代背景などを考えた場合、現在の感覚で、それを一方的に見識不足だと攻めて良いものなのか・・・。
 (地形&構造的に無理だと分かった時点で、ルートの選定そのものからやり直したのであれば、多少は良い結果になったと思う。それでも、青森と焼山をあの設計基準に準拠した形で繋ぐのは、無理があったと思うが・・・)

 一方で、「山行が」さんのレポートを見る限り、現在はかなり管理状態が悪いようで、せっかく作った物に対して、有効に活用してもらおう、という動きがあまり見られないのも、かなり残念なところです。
 特に、高原部の非常停車施設は、本来の目的用途で乗り入れると、違う意味で物理的に「停止させられる」みたいですが・・・。
 (イバラの藪に覆われている中に突っ込むらしいので、停止するというより、絡め取られる、という感じかもしれない。とにかく、かなり痛そうだ ^^;)
 維持管理面を含めて、もっと活用を考えた整備はできないのかと、そこは大いに突っ込みたいところです。

 そして、この設計基準には、非常に困った事実があります。
 昭和50年代以降、この基準に基づき、全国で幾多の大規模自転車道の整備が行われたはずですが、そこで得られたノウハウをもとに、内容をきちんと見直した形跡が、全く見られないのですよねえ・・・。
 (公示されたのが昭和49年3月で、最終改正が昭和49年11月。ノウハウの反映には早すぎる)

 ちなみに、私はこの青森十和田自転車道の焼山側区間の起点付近から終点付近まで、別ルート(国道103号)で何度か登った事があります。
 10%斜度の急坂が何度も出てくる難路ですが、現代のロードバイクで、軽装であれば、国道103号の急勾配でも登ってしまえるのです。

 そして、自転車道が未整備のまま事業終了してしまった笠松峠を越えて青森市に下る区間も、現在の国道や県道沿いに走れば簡単に行けるのです(無雪期の話。今の時期だと死ぬ。比喩表現でなく)。
 それどころか、ロードの速度だと、昼に焼山出発で笠松峠まで登って、銅像茶屋~十和田市経由で、青森よりも遠い八戸まで、明るいうちに到達できたりします。

 時代が変わって、サイクリングの形も変わってしまいました。
 せっかく作られた設計基準を有効に生かし、その目的通りに自転車道の整備を進めるためにも、現代の自転車ツーリングの実態や、大規模自転車道整備のノウハウを生かし、内容を厚くしたり、実態に即した基準に改正したりすれば、もっと良い基準になると思われるのですが・・・。

 この辺りは、本当に、何とかならない物ですかねえ・・・。


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コメント
No title
初めまして、青森在住のsorapapaと申します。いつも楽しく読ませて頂いております。
階段のある自転車道、どこかで見たことある気がして調べてみたら、十和田湖温泉スキー場のあたりですね。何度か前を通ったことがあり、こんなところに自転車道?とあまり気にも留めていませんでした。今回、紹介のあった「ヨッキれん」さんのレポートを拝見し、なるほどと思った次第です。
 
 ところで、青森県には中途半端な自転車道が私の知る限りあと2つあります。
1つ目が大規模自転車道の一般県道鶴田五所川原自転車道線。道が突然リンゴ畑にぶつかり消失、迂回路を示す案内が無いというしろもので、ホームページにメールアドレスが載っていたので問い合わせたところ、「地権者との折り合いが合わず用地買収出来なかった」との返事が返ってきました。
 
もう一つが浅瀬石川サイクリングロード。浅瀬石川沿いの田舎館村、黒石市を通る道ですが、ちょうど町の境界2kmほどが未整備のまま分断されています。黒石側から行くと道が芝生の広場となって消えているとういう状態で、両者を繋げようという意思が全く無いようです。本当に、たかだか2km程の区間なんですけどね。
 
 そんなこともあるので、YOTAさんやヨッキれんさんはかなり好意的に書かれていましたが、青森十和田間に自転車道を造るのはあの辺の地形を考えてもやはり無謀な事業だったと思います。青森県の相変わらずの計画性のなさと楽観主義が現れているような・・・ひねくれた見方ですが、自転車道として利用させるのはどうでも良くて、誰も知らない場所でこっそり公共事業をやってお金を使ったんではないかと邪推したくなります。
 長文失礼しました。
2015/12/18(金) 18:00 | URL | sorapapa #-[ コメントの編集]
Re: No title
sorapapaさん、コメントありがとうございます。

年末の多忙でチェックができなかったので、返信が遅れてしまいました。すみません。

青森県に限らず、自転車道は計画通りに整備が完了しなかった事例が多いようです。
中途半端でも、ちゃんと供用されているなら、まだましな方だ、と言いたくなる事例もあるようで・・・。

青森十和田自転車道は、本文中にも書きましたが、大幅なルート変更があっても、
全線を通すのは難しかったと思います。
技術基準が、もっと汎用性のある形に改定されていれば、別の手段もあったかもしれませんが・・・。
2015/12/22(火) 09:02 | URL | YO-TA #-[ コメントの編集]
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プロフィール

YO-TA

Author:YO-TA
2011年7月に東京から仙台に移住。
相変わらず、デジカメ片手に、サイクリングやハイキングを楽しんでいます。
突然、突拍子もないことをやらかしますが、それはまあ、ご愛嬌という事で…。

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